ソフトバンク子会社「Gen-AX」設立の狙い 「AIによる業務変革」はどこまで進むか?(2/2 ページ)
ソフトバンクのグループ企業には、生成AI開発に注力する企業として、SB IntuitionsとGen-AX(ジェナックス)がある。SB Intuitionsは生成AIの研究開発を担い、Gen-AXは生成AIのSaaSによる開発・運用とコンサル事業を手掛けている。Gen-AXの砂金信一郎社長に、設立の経緯や狙いを聞いた。
Gen-AXのビジネス戦略とは? 競合は?
――同様のサービスを提供している企業はあるのでしょうか。
いろいろな角度から見れば、あると思います。例えば、米Salesforceのような顧客関係管理(CRM)ツールにおいても、いま生成AIを部分的に導入する動きが盛んです。他の業種でも同様に、既製品に生成AIを導入する取り組みが進んでいます。
こうした製品の中には、いかに早く生成AIを取り入れてユーザーに届けるかを競争にしている面も多く、いち早く市場に出すために、生成AIのチューニングが十分にされていないケースもあります。将来的にもレッドオーシャンの領域だと言えますが、こうした中でわれわれは生成AIのチューニングを正しく実行し、精度の高い製品を提供していきたいと考えています。顧客の課題解決に十分につなげていきたいですね。
――Gen-AXが開発するプロダクトの特徴として、大きな一つの汎用LLMを置くのではなく、複数の特化型LLMを並列に並べています。規模が大きくない特化型の生成AIを並列で処理することによって、大きな単一のものを運用するよりコスト削減できる利点があると思いますが、性能面での違いはどうなのでしょうか。
ChatGPTのような非常に大きな一つの汎用LLMを運用する場合と、分野別などで特化したLLMを並べて運用する場合で、どちらが高い性能を発揮するか。実はこれはコンピュータサイエンスにおいて決着がついていない問題だったりします。
われわれは、LLM自体を日夜研究開発しているわけではなく、既存のLLMをいかにして応用して運用するかという技術を日々磨いている立場です。その面でも、既製品の複数のLLMに横串を通す形で、いかにして効率良くパフォーマンスを出していけるかを考えていくことが応用面で重要になってきます。その点でも、複数の特化型LLMを並べて展開する可能性を模索することは、Gen-AXの戦略にとっても理にかなっていると考えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
孫正義「A2Aの世界が始まる」 数年後のAIは“人が寝ている間に”何をする?
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、個人専用のAIが予定の管理や買い物などを代行する「パーソナルエージェント(PA)時代」が数年以内に到来するとの見方を明らかにした。
“孫正義流”ChatGPTの使い方とは? 「部下と議論するより面白い」
「部下と議論するより面白い」と株主総会で会場を沸かせた孫正義氏のChatGPTの使い方とは。
生成AIを導入しても“社員が使わない” 「生成AIプロンプト道場」の奮闘
生成AIを導入したはいいものの、実際に「活用」できていない。こうした課題を抱える企業が少なくない中、独自の社内プロモーションによって生成AIの利用者を伸ばしたのが、資産運用会社のアセットマネジメントOneだ。「生成AIプロンプト道場」の取り組みに迫る。
孫正義「SBGを世界で最もAIを活用するグループに」 AGIは10年以内に実現
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は10月4日、都内で開いた自社イベントに登壇し「SBGを世界で最もAIを活用するグループにしたい」と力説した。
ChatGPT創業者が慶大生に明かした「ブレイクスルーの起こし方」
ChatGPT開発企業の米OpenAIのCEOが来日し、慶應義塾大学の学生達と対話した。いま世界に革命をもたらしているアルトマンCEOであっても、かつては昼まで寝て、あとはビデオゲームにいそしむ生活をしていた時期もあったという。そこから得た気付きが、ビジネスをする上での原動力にもなっていることとは?
松尾豊東大教授が明かす 日本企業が「ChatGPTでDX」すべき理由
松尾豊東大教授が「生成AIの現状と活用可能性」「国内外の動きと日本のAI戦略」について講演した。
