“電動キックボード問題”が一歩前進? 次世代モビリティが示す新しい移動のかたち:高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ)
「ジャパンモビリティショー ビズウィーク 2024」では、スタートアップの熱量を感じた。利便性や安全性を高める技術やサービスの開発が活況だ。昨今、ユーザーの安全意識の低下が問題視される電動キックボードなども、改善のヒントが提示されていた。
モビリティに関する最新の技術やデザインなどを紹介する「ジャパンモビリティショー ビズウィーク 2024」(10月15〜18日)を取材した。超小型モビリティの機運の高まりを感じたわけだが、その中でも印象に残った乗り物を紹介しよう。
「この3日間、お昼休憩もトイレもまったく行けてません」。笑いながら、3日間の反響ぶりを答えてくれたのは、次世代のパーソナルモビリティを開発している企業、テムザック(京都市)の説明員だった。「ロデム」と名付けられたそれは、どんな人でも移動を楽しめるスマートモビリティだ。
分かりやすく例えるなら、後方から乗り込む方式の電動車椅子だった。筆者は以前から、車椅子は足腰が弱い方、下半身がまひしている方、けがや病気の方が利用するものなのに、後方へ腰を下ろすのは不安が伴うのではないかと思っていた。
もちろん日常的に繰り返している行為であれば、慣れが解決する部分もあるのだろう。腕の力が十分にある身体障害者であれば、なんてことないのかもしれない。だが、近年高齢者が増加している状況では、車椅子の乗り降りにさえストレスを感じる人が増えているのではないだろうか。
しかしロデムなら、少しは歩ける人であれば、後方から手すりにつかまりながら前進して乗り込める。しかもシートの高さが変更できるため、床に置いた状態で後方から乗り込むだけでなく、ベッドの高さに合わせることで、座ったまま滑り込むように乗り込めるよう工夫しているのだ。
これは実に画期的で、電動車椅子を再定義したと言ってもいいほどの出来栄えに見えた。このロデム、長年にわたる開発でここまで形状や構造が進化したそうだ。これから観光地などでシェアリングサービスの実証実験に入るそうだが、普及を期待したいモビリティだ。
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