“電動キックボード問題”が一歩前進? 次世代モビリティが示す新しい移動のかたち:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
「ジャパンモビリティショー ビズウィーク 2024」では、スタートアップの熱量を感じた。利便性や安全性を高める技術やサービスの開発が活況だ。昨今、ユーザーの安全意識の低下が問題視される電動キックボードなども、改善のヒントが提示されていた。
最新のグリーンスローモビリティ
ベンチャーというにはすでに規模が大きいEVメーカー、タジマモーターコーポレーション(東京都中野区)は、住友三井オートリース(東京都新宿区)のブースに新型のグリーンスローモビリティ用のEVを展示していた。
住友三井オートリースは、その名の通り、企業に車両をリース販売している企業だが、昨今の自動車業界の激変ぶりに対応するべく、さまざまな自動車ビジネスへと拡大中だという。その一つが自動運転のコミュニティバスとグリーンスローモビリティだ。
自動運転バスやグリーンスローモビリティは全国に拡大中だが、タジマモーターはグリーンスローモビリティ用の新型車両を展示した。
「新型車両は国内で生産しています。それと従来車両で要望の多かったエアコンも装備して、より快適に移動できるようにしました」と説明員。
従来よりフロアを低床としながらシャーシの剛性を確保するなど、開発には難しい局面もあったらしい。それでいて価格は約800万円からと、輸入して改造した従来車両と比べるとリーズナブルになっているようだ。
今回のジャパンモビリティショービズウィークでは、日本のスタートアップの個性と元気ぶりを感じ取ることができた。製造業は中国や新興国などに拠点を奪われてしまった感があるが、まだまだ日本国内でも対抗できそうな勢いが伝わってきた。
また、最近は電動キックボードの無法ぶりが目立ち、フル電動自転車(モペッド=原付という認識に改められつつある)もナンバーなしのノーヘル状態で、相変わらず走り回っている。このあたりを解決する方策が見えてきたのも収穫であった。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
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