“電動キックボード問題”が一歩前進? 次世代モビリティが示す新しい移動のかたち:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
「ジャパンモビリティショー ビズウィーク 2024」では、スタートアップの熱量を感じた。利便性や安全性を高める技術やサービスの開発が活況だ。昨今、ユーザーの安全意識の低下が問題視される電動キックボードなども、改善のヒントが提示されていた。
特定小型原付は経済を潤すか、停滞させるか
スタートアップブースでも、特定原付のマイクロモビリティを開発、もしくは輸入販売している企業が目立った。glafit(グラフィット)など、すでにマイクロモビリティで実績を上げて知名度もある企業も含まれるから、なおさら目立つのだろう。
電動スケートボードと電動キックボードを並べていたのは、富山県のスタートアップ企業、イーモビ。
電動アシストスケートボードはコントローラーによって速度を調整するのではなく、蹴った力を維持しようとする程度のアシストで、通常のスケートボード同様、公道では利用できない玩具だ。これはスケボー初心者用ではなく、サーフィン愛好家のオフシーズン練習用なのだとか。
同社が扱う電動キックボードは公道走行可能な特定原付だが、こちらでは自賠責に加入してナンバー登録した後でないと納品しない。つまり、法令に違反してナンバーを取得せずに公道で乗り回すことができないように、登録後でなければ納車しないそうだ。
イーモビが展示していた電動キックボードと電動アシストスケートボード。スケートボードはデッキに体重をかけるとセンサーが検知し、一度地面を蹴るだけで勢いが持続するようモーターでアシストする。デッキの裏面にはバッテリーが収まり、モーターは後輪片側だけに内蔵。モーターのパワーやデッキのサイズなどで3種類を用意
そもそもキックボードはスケボーを乗りやすくするためにハンドルバーを取り付けたもので、それを蹴り続けずに進めるようにしたのが電動キックボードである。手軽に移動の足として使うには、段差の多い公道でバランスを取り続ける必要があるなど、自転車に比べて乗りこなすハードルが高い。
単に小型軽量というだけで普及させてしまったことに問題があり、手軽に手に入ることで法令順守の意識が薄い消費者が乗り回してしまう危険性が高い。同社のような販売方法を広めることが交通安全につながりそうだ。
同社では電動アシスト自転車も取り扱っている。これもちまたで問題視されているファットバイク(太いタイヤのマウンテンバイク)のフル電動自転車と同じデザインながら、スロットルグリップを取り付けておらず、電動アシスト機能しか有していないというものだ。このように真面目なビジネスでユーザーを育てる企業が成長してほしいと思わされた。
一方で、ソニーのブースはものすごい人気で、入場制限が行われていたため、ブース内の取材はできなかった。CEATEC2024が同時開催だったことから、イメージセンサーなど半導体関係の展示も多かったようだが、クルマに関する展示もあった。
それが車体をイメージしたケージ状の展示物だった。けれども車内のモニターには、レーザーセンサー技術「LiDAR(ライダー)」とカメラによる前方の情報が映し出されただけで、自動運転で移動中の車内でどう過ごすかという課題への提案には程遠い内容だった。
いささか筆者の期待とはズレていた。やはり自動運転での移動中に新たな価値を見いだすのはソニーといえど難しいのだろう。それだけに難産の末に生み出されたものを見てみたい、という思いがよぎった。
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