藤沢市コンタクトセンター開設1年、現場はどう変化した? 効率化だけではない、データ蓄積の効果(1/2 ページ)
2023年10月に「藤沢市コンタクトセンター」を開設した神奈川県藤沢市。専属部隊が住民からの問い合わせ対応にあたっている。市は同センター開設を皮切りに、「藤沢DX」と名付けた行政の業務効率化を加速させている。開設から1年が経過し、現場にはどのような効果が生まれているのか。
自治体に問い合わせをしたいとき「どの窓口に聞けばいいんだろう?」と迷ったことがある人は、きっと少なくないはずだ。電話をかけてはみたものの、担当課にたどり着くまでに長く待たされ、くたびれた経験がある人もいるだろう。
こうした課題を改善しようと、コンタクトセンターを設置する自治体が増えている。
神奈川県藤沢市もその一つだ。2023年10月に「藤沢市コンタクトセンター」を開設。住民から寄せられる電話、メール、チャットなど全ての問い合わせチャネルを同センターに集約し、専属部隊が対応にあたっている。市は同センター開設を皮切りに、「藤沢DX」と名付けた行政の業務効率化を加速させている。
開設から1年が経過し、現場にはどのような効果が生まれているのか。
属人化、ブラックボックス化……山積みだった課題
江の島などの観光資源に恵まれ、年間を通じて多くの観光客が訪れる藤沢市。人口約44万人を擁し、市民から寄せられる問い合わせ(電話、メール、有人チャットなど)の件数は1カ月あたり約2万件に上るという。
「問い合わせ窓口は、市民が行政と接する最初の入り口。大事な業務であるにもかかわらず、課題が山積みだった」と市デジタル推進室主幹の増渕典勝さんは振り返る。
課題は主に3つあった。
1つは、問い合わせチャネルが多岐にわたりサイロ化(孤立化)していたことだ。電話やWebサイトから問い合わせできるほか、各課に直接送れるメール、来庁して紙に記入し提出する「意見提案」などもあり、それぞれ問い合わせのワークフローが異なっていた。
市民にとって分かりづらいだけでなく、寄せられた問い合わせが、統一された形式で庁舎内にナレッジとしてたまりにくい構造になっていた。
2つ目の課題は、業務の属人化だ。全庁でナレッジが共有化されておらず、問い合わせ対応は個々の職員の経験や知識頼みといった側面があったという。新たに人事異動で配属された職員が問い合わせに対応できない、答えられる職員が休暇中だから対応できない――といったケースが発生していたという。
3つ目は、業務のブラックボックス化だ。問い合わせ対応業務の「見える化」ができておらず、誰がどの問い合わせに対応しているのか、その進捗状況も含め把握できていなかった。対応漏れが起きても気付きにくい状況にあったという。
2020年、地方行政のデジタル化を目指し、総務省が「自治体DX推進計画」を策定。これを受けて全国の自治体がDX計画の策定を進める中、藤沢市は、全庁に共通した業務・課題である問い合わせ対応を、最も重要なDX施策に位置付け、改革を進めた。
こうして2023年10月に開設したのが藤沢市コンタクトセンターだった。
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