生成AIは、1日2500件の対応に追われるJR西「お客様センター」をどう変えた?:東大・松尾研発のELYZAと協業(2/2 ページ)
R西日本のお客様センターが、生成AI活用を強化している。このお客様センターを運営するJR西日本カスタマーリレーションズはこれまでも、東京大学松尾研究室発のAIベンチャーのELYZAと協業して生成AI起点で業務フローを見直し、オペレーターの業務効率化に取り組んできた。JR西日本のお客様センターでは、生成AI活用によって業務の効率化にとどまらず、VoC活用の可能性も広げているという。
業務効率化だけでない、うれしい効果
生成AI起点での業務フロー見直しにより、要約作成時間は1件当たり65秒、「ご意見・ご要望」の場合は230秒の削減につながった。これまでは手作業で1週間の応対履歴を「週報」として作成し、VoCの傾向を分析していたが、この作業時間は2時間から30分に短縮したという。
他にも、同社では輸送障害が発生した際に顧客の声をまとめた「反響報告」を作成している。問い合わせも増え、現場がごたつく中での対応となり負荷の大きい作業だったが、生成AIによって自動で応対履歴を集計、可視化できるためオペレーターの負担が軽減したという。
生成AI活用でVoC分析の強化につながったことで、VoC分析担当者からは「問い合わせ内容がダッシュボードで分かりやすく可視化されており、サービス改善のためのアイデアに素早くたどり着くことができる」と作業の効率化を評価する声が上がった。
オペレーターからは「これまでは問い合わせ傾向の変化などを“肌感覚”を基に集計・報告していたが、客観的に捉える事ができるようになった。その結果、問い合わせの傾向を把握できるようになり、オペレーターが事前に資料を確認しておくなど、お客さま対応に備える事ができるようになった」と、より顧客対応に集中できる環境を評価する声が上がった。
対話の自動化ではなく「オペレーター業務の高度化」を目指す
今回の取り組みは、JR西日本カスタマーリレーションズとELYZAが共同で実施した。ELYZAの曽根岡侑也代表取締役社長は「今回の事例で生成AI時代におけるVoC活用の1つの型を作ったと思っている」と述べ、今後LLMを用いたコンタクトセンターの高度化支援に本格的に参入すると発表した。
曽根岡代表は、他社と比較したELYZAのプロダクトの強みについて「オペレーターの業務高度化」に着目している点を挙げた。「昨今コンタクトセンターの生成AI活用においては『対話の自動化』がキーワードになっている。しかし、これまでコンタクトセンターの現場で使用される生成AIの形を数多く検討し、やり切った結果、今は100%自動化するよりも、業務効率化によりオペレーターをサポートするサービスのほうが適切だという答えに行き着いた」(曽根岡代表)
コンタクトセンター特化のプロダクトの提供は2025年中のリリースを目指す。
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