ライバルはステーキハウス? ロピア、2025年春に新業態 大手スーパーの飲食事業参入の狙いは(2/2 ページ)
大手ディスカウントスーパー「ロピア」を展開する「OICグループ」(川崎市)が、ある異業種との提携を発表した。居酒屋や焼き鳥店はおろか、ステーキハウスをも脅かすかもしれない「驚きの新業態」が生まれる計画だという。果たしてその新業態とは――。
「バーベキュー併設ロピア」を計画
ロピアはディスカウントスーパーであるものの、もともと精肉店として創業したこともあって精肉の品ぞろえには定評があり、例えば牛肉ではコスパがいい米国産・豪州産から国産の黒毛和牛まで幅広く取り扱っている(店舗により取り扱い状況は異なる場合がある)。もちろん「ディスカウントスーパー」であるがゆえ、店内では野菜や酒など、精肉以外のさまざまな商品もお得な価格で購入できることはいうまでもない。
OICグループによると、バーベキュー場を併設する店舗では「スーパーで購入した商品を食材としてカートのままバーベキュー場に持ち込めるようにする」計画で、さらにオリジナルブランド肉や、コスパに優れたロピアPB(プライベートブランド)商品のオリジナル調味料、輸入ワインを導入するなど「大手ディスカウントスーパー運営」であることを存分に生かした内容にする計画だとしている。
実は、OICグループが飲食店を運営するのは今回が初めてではない。
ロピアは2019年に設立した子会社「eatopia」(イートピア)を通じて飲食事業に参入。さらに、2023年には台湾・台中市の「ロピアららぽーと台中店」に併設するかたちで肉料理店と寿司店を出店。いずれもロピア店内で販売している食材を用いたできたての商品を食べることができる。そのため、今回の「バーベキュー併設ロピア」はそうした店舗の「進化型」であるともいえよう。
チェーンスーパーの飲食事業参入 期待できる効果は?
ロピア(OICグループ)のように「チェーンスーパーが成長の過程で飲食事業に参入する」ことは古くからおこなわれてきた。
かつてダイエーグループだった「ドムドムハンバーガー」「フォルクス」「ビッグボーイ」や、現在もセブン&アイHDの一角を担う「デニーズ」などのように、全国へと規模を広げることになった飲食チェーンを思い浮かべる人も多いであろう。
また、近年ではドン・キホーテを展開するPPIHグループ(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)も飲食事業に参入。日本の焼き芋が人気の東南アジアではドンキがプロデュースする焼き芋スイーツ店が話題を集め、それが集客の要の一つとなっている店舗もあるという。
こうしたチェーンスーパーの飲食事業参入は、大規模小売店舗法(大店法)によって大型商業施設に対する出店規制が厳しくなった1970年代後半から増えたものだ。飲食店の展開は大型商業施設を出店するよりも手続きが煩雑ではなく、もちろん飲食店で自社の大型商業施設の床を埋めて集客力を高めることができるという利点もある。
先述したとおり、ロピアは今年新たに大型ショッピングセンター業態「シーナシーナ」を立ち上げたばかり。8月末から複数のイトーヨーカドー跡への出店を開始している。
シーナシーナの中には、空き床となっている飲食店区画や屋上などにバーベキュー場やビアガーデンを開設できそうな遊休区画を持つ店舗が複数ある。こうしたグループの飲食店やバーベキュー場の出店によって、一度大型空き店舗となった建物の「新たな魅力創出」も期待される。
2024年9月に閉店した「イトーヨーカドー弘前店」。10月31日からはロピアが運営する「シーナシーナ弘前」として仮営業を開始している(全面開業は2025年冬予定)。ロピアがイトーヨーカドーから引き継いだ店舗のなかには、これまで同社が手掛けていなかったような規模の大型ショッピングセンターも少なくない(写真:若杉優貴)
もし「ロピアの店内で買った肉とビールを店舗併設のバーベキュー場に持ち込んで、みんなでワイワイ食べる」ことができるようになるのであれば、これまで営業していたイトーヨーカドーや、外食とも中食とも異なった「スーパーマーケットの新しい楽しみ方」として大きな話題を呼ぶことは間違いない。
「バーベキュー場併設型ロピア」は、2025年春の1号店開業をめざしているという。
全国各地に急速に店舗網を広げつつあるロピアだけに、近い将来には「居酒屋やステーキハウスのライバルはロピア」といわれるようになるかもしれない。
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