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モノレール登場から200年、なぜ広まらなかったのか LRTにも共通する課題(4/5 ページ)

公共交通は形を変えながら、新たな局面を迎えている。

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広まるLRTの可能性

 昨今は、より低額な投資で実現可能で維持費も安いとされるLRT(低床型車両を用いた次世代型路面電車システム)やBRT(バス高速輸送システム)が広まりつつある。

 日本のLRTの嚆矢(こうし)は旧・JR西日本の富山港線(富山駅-岩瀬浜間 約7.7キロ)をLRT化した富山ライトレール(2020年2月に富山地方鉄道に合併)だ。JR富山港線は、北陸新幹線の延伸に伴い富山駅の高架化が構想されると、多額の投資に見合う利用数が見込めないとされ、高架化せずLRT化することが決定された。


富山港線を走るLRTの低床型車両(筆者撮影)

 これを受けて、JR路線としての富山港線は2006年2月末をもって廃止。約2カ月間のLRTへの切替期間を挟んで、同年4月29日に県や市、富山地方鉄道などの地元企業が出資する第三セクターの富山ライトレールとして再スタートした。

 LRT化に伴い新駅の設置、ダイヤ改正(JR時代の1時間1本から4本へ増便・終電時間の改正)、ICカード「passca(パスカ)」の導入、さらにLRTの蓮町駅・岩瀬浜駅に接続するフィーダーバスを運行開始するなど、使い勝手を大幅に改善した。

 その結果、富山ライトレール開業前の2005年度の1日あたりの輸送人員は平日2265人・休日1045人だったが、LRT化後の2006年度は平日4893人・休日4917人と大幅に増加。その後の10年間(2006〜2015年)の平均値を見ても平日4767人、休日3579とLRT化前と比べて平日で2.1倍、休日で3.4倍にまで伸びた。

 また、2023年8月には宇都宮ライトレール(宇都宮駅東口-芳賀・高根沢工業団地間 14.6キロ)が開業。既存路線のLRT化ではなく、新規路線でのLRT開業事例として注目される中、開業1周年を迎えて間もない2024年9月12日には、早くも累計利用者数が500万人に到達した。環境性(低公害・省エネ)や少子高齢化社会を前提とするコンパクトシティー構想とも親和性の高いLRTの可能性の大きさを示したといえる。

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