なぜ、イケアは激安“50円”ソフトクリームを提供するのか?:マーケティング戦略を考察(4/4 ページ)
イケアは店舗内にあるレストランやビストロで、気軽に楽しめる軽食を激安価格で提供している。一体なぜだろうか。
目玉商品で来店を促し、顧客のデータの収集・活用で顧客理解をさらに深める
50円のソフトクリームはロスリーダー(目玉商品)としての役割も果たしている。これは利益を度外視した商品を出すことで顧客を引き寄せ、他の商品購入につなげる戦略である。
価格以上の価値を提供することで、顧客との長期的な関係を築きやすくし、売り上げ増加に加え、イケアというブランドイメージ向上や顧客ロイヤリティー強化につなげている。
また、多彩なフードメニューで顧客の来店を促すことで、さまざまなデータの収集がしやすくなる。例えば、どの時間帯にどの商品が売れているか、家族連れと単身客での購買行動に違いはあるのかなどといったデータだ。
これらのデータを、店舗レイアウトの最適化や商品ラインアップの強化など、マーケティング戦略全般に生かしているのではないか。
イケアの戦略は他企業にも応用可能
イケアは50円ソフトクリームをはじめとする激安フードメニューを通じ、価格以上の価値を提供することで顧客満足度を高め、ファンを増やした好例である。それにより、顧客体験向上と収益化の両方を実現している。
この戦略は他企業にも応用可能であり、顧客満足度を高めながら持続的な成長を目指す上で、大いに参考になるものだ。イケアの取り組みは、顧客との関係性を深化させ、ブランドの価値を高めるための効果的な手法であるといえるだろう。
金森努(かなもり・つとむ)
有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師
金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。
2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。
コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、EC等、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ロイヤルホスト、冬メニューに注力 「ホテルの結婚式のような」豪華料理で勝負
ファミリーレストランチェーン「ロイヤルホスト」は11月27日から、冬季フェア「Good JAPAN 冬のご馳走」を販売する。
なぜ、松のやは「290円朝食」にこだわる? ターゲティングとポジショニング戦略から見えた“必然”
この価格設定は、同業他社と比較しても圧倒的である。
やよい軒が“ロボ化”してまで死守した「ご飯おかわり自由」
コロナ禍でライフスタイルが変容する中、大手外食チェーンが「朝食」の時間帯を狙った戦略を展開する。やよい軒では、2006年の創業時から朝食メニューを提供している。メニューの開発経緯や戦略について運営企業に取材した。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
ドンキ「あんだく溺れ天津飯」が爆売れ あんが“容器の限界”超えてしまい、開発時は難航
ドンキで「あんだく溺れ天津飯」が売れている。“偏愛”に振り切った商品だからこそ、開発時は苦労したという。


