「医療用大麻ビジネス」は海外で右肩上がり 日本が参入する日は来るのか:スピン経済の歩き方(1/7 ページ)
12月12日に改正大麻取締法が施行され、注目が集まる「大麻ビジネス」。世界を見ると右肩上がりで成長しているが、日本の大手企業で参入しているところはない。今後はどうなるか――。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
12月12日に施行された「改正麻薬取締法」および大麻取締法を改正した「大麻草栽培規制法」によって、「大麻ビジネス」が注目を集めている。
と聞くと、正義感の強い方などは「社会全体で若者の大麻汚染を厳しく取り締まっていかなければいけないときに、このバカライターはなんて不謹慎なことを」と、怒りでどうにかなってしまうだろう。
ただ、ここでいう大麻とは、多くの方が頭に浮かべる「娯楽用大麻」ではなく、「医療用大麻」のことだ。
あまりそういうイメージがないだろうが、大麻草からは100種類にも及ぶカンナビノイド成分が抽出できる。中には、てんかん治療薬や多発性硬化症の疼痛緩和薬、がん疼痛治療薬、さらにはサプリメントとして活用されているものもある。そんな「医療用大麻」の需要が今、世界的に右肩上がりで成長しているのだ。
市場調査会社SDKI(東京都渋谷区)の発表(2023年12月25日)によると、医療用大麻の市場規模は2023年に約169億米ドルを記録し、2036年までに同494億米ドルに達するという。
この勢いをさらに後押しするのが、米国の規制緩和だ。2024年5月、米司法省が大麻を危険性の低い鎮痛剤などの薬物と同じ分類にした。ご存じのように、米国では「娯楽用大麻」を解禁する州が増え、大麻関連企業が急成長し、中には株式上場するところもある。
この経済トレンドはゴールドラッシュになぞらえ「グリーンラッシュ」と呼ばれ、トランプ政権ではさらに加速して、「大麻ビジネス」が世界的巨大産業に成長するのではないか、と予測する専門家もいるほどだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
多くの人に「感謝」されているのに、なぜ医者の給与は下がるのか
新型コロナの感染拡大を受けて、日本の医療界が大変なことになっている。患者があふれて「医療崩壊に陥った」といった話ではなくて、患者が増えたにもかかわらず、医療従事者の給与がカットされるかもしれないというのだ。どういうことかというと……。
海外の富裕層が押しかける「診療所」をほとんどの日本人が知らない理由
関西国際空港の近くにある病院を目指して、わざわざ海外からやって来る人が増えている。病院名は、IGTクリニック。がん治療専門のクリニックに、なぜ外国人の患者が増えているのか。その理由は……。
患者は“神様”なのか カスハラから医療を守るために
埼玉県で発生した訪問診療医師射殺事件。コロナ禍でも在宅医療に取り組む貴重な医療人を、一方的で独善的なクレームを寄せるカスハラ(カスタマーハラスメント)が、殺人にまで至るという究極の終末を迎えてしまいました。

