担保不要、4営業日で資金提供 三菱UFJ信託銀行が参画する「スタートアップへの新たな資金供給法」とは?(2/2 ページ)
三菱UFJ信託銀行は、フィンテックスタートアップのYoii(ヨイ)が組成するスタートアップへの資金提供に特化した総額11.3億円のファンドにアドバイザリーおよび出資者として参画する。Yoiiが組成するのは「融資でも、出資でもない」新たな仕組みで、スタートアップに成長資金を提供するものだ。どのような仕組みなのか?
従来型融資では見逃す成長力
従来の銀行融資では、財務諸表や担保力が審査の中心となり、成長途上のスタートアップ企業には資金調達のハードルが高かった。一方、株式による資金調達は、企業価値の評価や投資家との交渉に3〜6カ月かかることも多く、機動的な資金調達が難しい。
「従来の金融機関の評価基準ではどうしても拾いきれない企業に対して、しっかり伸びていく企業を見極めて資金提供できる」とYoiiの宇野雅晴社長は話す。同社はテクノロジーを活用し、会計データや売上データをAPI連携で取得。将来の収益予測に基づいて与信判断を行う。
RBFの与信判断は、銀行に近いのが特徴だ。「キャッシュフローを重視する点で、銀行の事業性評価に近い」(Yoii)。ベンチャーキャピタルが100社に1社の大化けを期待するのに対し、RBFは全体の返済確実性を重視する。現在のデフォルト率0.5%という低水準は、この審査手法の有効性を裏付ける。
資金使途は大きく2つに分かれる。広告宣伝費や仕入れ資金など事業拡大に向けた「攻め」の投資と、ベンチャーキャピタルからの出資や銀行融資までの「つなぎ資金」だ。中小企業は攻めの利用が多く、スタートアップ企業は資金調達までのつなぎ利用が目立つ。現在、Yoiiの顧客の3〜4割は中小企業が占め、ITやソフトウェア以外の業種からも引き合いがあるという。
三菱UFJ信託銀行は「各地で地銀がスタートアップ向け融資に取り組んでいるが、なかなかうまく立ち上がっていない。この取り組みを通じて地銀が知見を積む機会になる」と期待を寄せる。将来売上の予測による与信判断は、金融機関にとっても新たな事業性評価の手法として注目される。
米国では普及、日本で初のファンド化
「米国では既にRBFという仕組みが普及している」と三菱UFJ信託銀行は指摘する。日本での普及はこれからだが、金融機関の関心は高まっている。背景には政府の後押しもある。政府は「スタートアップ育成5か年計画」を掲げ、2027年度までに投資額を現在の10倍超となる10兆円規模に引き上げる目標を示すなど、スタートアップへの資金供給強化を進めている。
「2号ファンドの組成も視野に入れている」とYoiiの宇野氏は話す。今回のファンドで実績を重ねることで、より多くの金融機関の参画を促す考えだ。特に地方銀行からの関心が高く、各地域での資金供給強化につながる可能性もある。
三菱UFJ信託銀行は今回、出資者としてだけでなく、ファンド設立のアドバイザーとしても参画。「将来の売上予測による与信アルゴリズムへの期待が大きい」と評価する。Yoiiは将来的に金融機関向けにモデルを提供することも視野に入れる。
日本では会計のデジタル化が進展し、クラウド会計ソフトの普及やAPI連携の整備でRBFに必要なデータ基盤が整いつつある。スタートアップのデットファイナンス活用も2021年の約700億円から22年には約3000億円へと4倍に拡大した。スタートアップの資金調達手段として、RBFの存在感が高まりそうだ。
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