スポーツカーに未来はあるのか “走りの刺激”を伝え続ける方法:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
スポーツカーはクルマ好きの関心を集め続けているが、乗り回せる環境が限られるようになってきた。一方、マツダ・ロードスターなど価値のあるモデルも残っている。トヨタは運転を楽しむ層に向けた施策を展開している。今後のスポーツカーを巡る取り組みにも注目だ。
高根英幸 「クルマのミライ」:
自動車業界は電動化やカーボンニュートラル、新技術の進化、消費者ニーズの変化など、さまざまな課題に直面している。変化が激しい環境の中で、求められる戦略は何か。未来を切り開くには、どうすればいいのか。本連載では、自動車業界の未来を多角的に分析・解説していく。
この先、ガソリン車で運転が楽しいクルマはなかなか作れない。トヨタのスープラは生産終了となり、GR86はドイツで販売が終了したとのことだ。どちらも欧州で厳しくなる衝突安全基準に対応することが難しいのが理由のようだ。
少し前の話になるが、ホンダの軽ミッドシップスポーツ、S660も騒音規制などへの対応が難しく、生産を終了した。
普通のクルマ、例えばミニバンやSUVであれば、その時点の規制に合わせて開発や変更を行うことが(当然、内容にもよるが)それほど難しくはない。デザインやエンジン性能は、保安基準や排ガス規制をクリアした上で決定される。しかし、スポーツカーとしてデザインし、走行性能を追求するとなれば、ユーザーの期待値もありハードルは上がってしまう。
その一方で、ネットニュースでも自動車雑誌でも、スポーツカーの復興を取り上げる記事は相変わらず多い。それが自動車雑誌を長年愛読してきたユーザーに響くのは納得できるが、果たしてスポーツカーの売れ行きにどれほど影響を与えているかというと、難しいところだ。
それくらい、スポーツカーはクルマ好きの関心を集めるが、それを購入して長く維持し続けることは難しい。スポーツカーはクルマの軽さや運動性能を重視しているため実用性が低く、乗り回せる環境が限られている。
若い頃にスポーツカーを楽しんだクルマ好きも、子育て世代になれば実用的なクルマに買い換えることを余儀なくされるものだ。しかし子育てが終わり、自分の時間が持てるようになると、再び趣味のクルマとしてスポーツカーを手に入れる向きも少なくない。
だが、今後はそうした選択肢も失われる可能性が出ているのである。
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