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スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。
スポーツカーというジャンルのクルマが減っている。SUVとミニバン、軽自動車でほとんどが埋め尽くされる日本市場だけでなく、世界中の自動車市場でスポーツカーは極めてニッチなジャンルになった。
けれどもそれは、今に始まったことではない。スポーツカー=クルマ好きが好むジャンル、というステレオタイプが通用したのは1990年代までのことだ。
そこから30年余り、自動車メーカーはそれぞれのカタチでクルマ好きをつなぎ止める手段を考え、努力し続けてきた。
筆者がスポーツカー好きだから、という私情ではない。スポーツカーこそ運転が楽しめる唯一のクルマだとも思っていないし、たいていのクルマには運転操作自体を楽しませてもらっている。それでもスポーツカーはクルマ好きにとって、特別な存在なのだ。
そもそもスポーツカーはぜいたくな工業製品だ。人が乗って移動するなら軽自動車で事足り、仕事のクルマとしてはトラックやバンタイプの荷物を運ぶクルマが役に立つ。
それと比べるとスポーツカーは基本的に2人しか乗れず、荷物もそれほど運べない。実用性という点においては最低限のレベルをなんとか確保しているだけのクルマである。
軽自動車以下のヒト・モノ運搬能力しかないクルマに大枚をはたくのは、よほどお金の使い道に困っている人か、筋金入りの古典的なクルマ好きだけだろう。
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