高速道路SAPAの「有料化」案 しわ寄せで何が起こるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)
高速道路のサービスエリアとパーキングエリアについて、混雑緩和を目的とした有料化の検討について報じられた。しかし、有料化にはデメリットも多い。駐車スペース拡充や通行料金の見直し、トラックドライバーの地位向上などについても考える必要があるだろう。
先日、高速道路関連のニュースでちまたをにぎわせた件がある。高速道路のサービスエリア/パーキングエリア(以下、SAPA)の混雑がひどく、高速道路を運営するNEXCO各社はそれを解消するため、SAPAの利用を有料化することを検討しているというものだ。
これに対して「有料化したら、ますます休憩を取らなくなって危険だ」とか「運送コストの上昇を誰がカバーするのか」という反対意見がいくつも見られた。
どれももっともな意見である。そもそもNEXCO各社は、SAPAを有料化したら従来の高速道路料金の根拠が通らなくなってしまうことを踏まえて言っているのか、確かめたくなる。
高速道路の建設費には当然のことながらSAPAの建設費も含まれている。高速道路料金は、その建設費を償還するために徴収しているのだから、高速道路料金を払っている車両の乗員は、SAPAを利用する権利があるはずだ。
しかしSAPAが混雑し、利用できない車両が発生している現在、利用時間を制限することで混雑の緩和を図ろうとしている。そのための有料化なのである。
現時点ではSAPAの利用自体が有料になるのか、一定時間までは無料で、それを超えると有料になるのかは、決まっているわけではない。けれども、どちらにせよ十分な休息を取ろうと思ったらある程度の時間は滞在することになる。しかも高速道路で長距離移動をすることになれば、どこかのタイミングで長い休憩を取るのが一般的だ。
高速道路を利用しているドライバーのうち、大きく影響を受けるのは当然、長距離輸送が多い大型トラックのドライバーだ。夜間はSAPAに駐車して仮眠を取るドライバーも多い。その時間帯には大型車の駐車スペースは満車になり、乗用車の駐車スペースなど空いているところを見つけて駐車している光景を見かけるものだ。
さらに、8時間は連続して休憩を取らなければならないのだから、一定時間しか無料で利用できないとなれば、SAPAでの休憩は慌ただしいものになる可能性もある。結局、SAPA以外の路肩に駐車するトラックを減らせない事態に陥るのではないだろうか。
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