高速道路SAPAの「有料化」案 しわ寄せで何が起こるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
高速道路のサービスエリアとパーキングエリアについて、混雑緩和を目的とした有料化の検討について報じられた。しかし、有料化にはデメリットも多い。駐車スペース拡充や通行料金の見直し、トラックドライバーの地位向上などについても考える必要があるだろう。
有料化で利用が減ればデメリットしかない
実は有料化はかなり前から検討されていて、中型以上のトラックでは2019年から実験的に予約制と有料化が導入されていた。しかし東名高速道路の豊橋PAの1カ所だけで行っていたため、有料化された途端に周辺のSAPAへ利用者が流出した。結果的に、有料化はNGと利用者は判断しているのだ。
まず、予約自体がドライバーにとって大きな負担になることを、NEXCO各社は理解していないようだ。荷主や荷受人の都合でスケジュールが決められ、さらに休憩を取るタイミングまで法規で定められている。しかも道路は生き物のように刻々と状況を変えるから、休憩の場所まで縛りを入れられたらストレスは相当なものになる。
交通事故や道路工事などで交通渋滞が起これば、予定した時刻に到着できないこともある。そこまでの走行で時間的なマージンを費やしてしまっていたら、休憩の場所を変更しなければならない事情も出てくる。SAPAの予約は、ドライバーにとって足かせでしかないのである。
現時点で検討されているのは、乗用車で2時間、大型トラックで10時間までは無料で利用でき、それを超えると有料となるという案だ。だが、一度有料化を導入してしまえば、料金制度はどのようにも変えられる。
輸送のための高速道路料金さえ荷主が負担してくれず、運送会社やドライバーが負担しているケースすらあると言われている。であれば、休憩のためのSAPA利用料金を荷主が負担してくれる可能性は低い。それを知っていながらSAPAの利用を有料化するのは、いささかずるいという思いもある。
SAPAはドライバーの休息スポットであり、高速道路網を構築するためには不可欠の施設だ。仮眠ができないなら高速そのものを利用しないケースも出てくる。
そうして思うように休憩が取れずに疲労がたまり、居眠り運転などで交通事故を起こしてしまうかもしれない。そんな最悪の事態になったら誰が責任を取るのだろうか。運送会社やドライバーだけを責めることはできないだろう。
有料化によってSAPAが利用しづらくなれば、現在のようにSAPAの出入り口付近に駐車してしまうトラックもなくならないだろう。違法駐車状態で危険ですらあるこの状況を解消するためにも有料化を導入しようというのであれば、逆効果にもなり得る。
また、有料化によってSAPAの利用客が減少すれば、SAPAに入っているテナントの売り上げも減少することになる。ロイヤリティを払って出店しているテナントにとっては、無視できない問題だろう。
ある程度までの滞在時間までは無料だとしても、混雑時は滞在時間を読めない可能性も高い。そうなったらSAPAを敬遠するドライバーも出てくる。有料化によってテナントの売り上げは減りこそすれ、増えることはないのだ。
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