スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。
スポーツカーとはどんなクルマか
スポーツカーの楽しみの真髄は、ステアリングのわずかな操作にも間髪入れずに反応してくれて、即座に旋回へと導く、鋭くも素直なステアリングフィール(自動車の操舵による感触のこと)とハンドリング性能である。エンジン性能は必要十分なだけあればよく、できるだけ軽量・コンパクトで低重心であることが重要だ。
走ることだけに専念したデザインや仕様、エンジン音やマフラー音のチューニングなど、ドライバーの心を高ぶらせる仕立てが施されており、自分でクルマを運転操作する手応えにあふれているクルマがスポーツカーなのである。
最近では、高性能なクルマも広義ではスポーツカーの部類に入るが、スーパースポーツカー(スーパーカーはさらに過激な性能を誇る)ともなると、公道でその性能を発揮することは危険だ。有り余る性能は、純粋に走りを楽しむクルマからはやや逸脱している印象がある。
現在SUVが人気なのは、都会的な雰囲気とオフローダーテイストの新鮮な印象に加えて、高い実用性を兼ね備えているからで、それを乗り回すことに満足感を得ているオーナーが多いということだ。
しかも車種によっては、普通に走るのであればSUVの大柄なボディを感じさせない俊敏なフットワークを見せることもできる。そうした自動車メーカーの技術進歩もSUV人気の理由の一つだろう。
最近はミニバンやスーパーハイトワゴンを自室のように利用しているドライバーも珍しくない。それは自宅では音楽を思い切り聴けないとか、そもそも自分の部屋がないという哀愁漂うオーナーもいるからだ。
このように、純粋に走りを楽しむドライバー以外にも、クルマの楽しみが多様化してきたことから、スポーツカーは生きづらい時代になってきた。
また純粋に走りを楽しむためのクルマだけでなく、実用性を兼ね備えながらスポーツカー以上の性能を誇るスポーツモデルも存在する。これは4ドアや5ドアの車体をベースに、骨格からパワーユニットや足回りを強化したもので、例えばホンダの「シビック タイプR」やスズキ「スイフトスポーツ」が該当する。
これも技術進歩がもたらした、クルマ好きに向けた自動車メーカーの答えであり、見事にクルマ好きの気持ちを捉えている。しかし、これらの実用性を兼ね備えたスポーツモデルも、作り続けることが難しくなっているのだ。それはクルマに対する各種規制が厳しくなってきているからである。
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