スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
スポーツカーが生き残るのが難しい時代になった。クルマの楽しみ方の多様化や、規制の厳格化が背景にある。一方、マツダ・ロードスターの大幅改良では、規制対応だけでなく、ファンを納得させる改善を実施。多様化が進む中でビジネスもますます複雑になるだろう。
厳格化する規制にどう対処していくか
クルマを取り巻く規制は厳しくなるばかりだ。燃費や排ガスに関する規制はよく知られているが、それだけでは済まないところに、スポーツカー存続の難しさがある。
対歩行者への衝突安全性能を高めるため、ボンネットの高さを確保しなければならないのは、スポーツカーにとってかなりのマイナス要素だ。しかし、衝撃を検知したらボンネットが持ち上がってエンジンとの空間を確保することで、この問題は解決できた。衝突時には必要以上にボンネットが折れ曲がる事態になるというデメリットも生じたが、スポーツカーのスタイリングと衝突安全性を両立させたのだから、ここは許容すべき部分だろう。
日本には軽自動車という最高にコスパのいい自動車規格があり、実用性でそれらを上回るのはほぼ不可能だが、かつてはこの軽自動車規格でもスポーツカーは開発されて、販売された。しかしホンダの「S660」が生産終了した今、軽規格の日本製スポーツカーはダイハツ「コペン」が支えている。
皮肉なことに軽自動車という規格が軽スポーツを途絶えさせようとしているのである。英国では少数生産の自動車メーカーには特例措置があり、排ガス規制や衝突安全基準など保安基準の適用を免除されている。しかし自動車文化に乏しかったわが国では、産業としての自動車が優先され、こうした措置は取られてこなかったのだ。
排ガス規制に関しても年を追うごとに厳しくなり、エンジンの高性能化を追求するのは相当に難しくなった。それでもターボチャージャーやモーターを組み合わせたハイブリッド化などによって、スポーツカーやスーパースポーツは延命できたのだ。
騒音規制もマフラーからの排気騒音だけでなく、タイヤが走行中に発するノイズまで対象となった。前述のホンダS660はミッドシップでリアのオーバーハングが極端に少ないデザインのため、リアタイヤから発せられるノイズやエンジンノイズが響く構造だった。そのため、新たな騒音規制をクリアできなくなったというのが生産終了の理由だと聞いている。
これまで生産されてきた車両については、新しい規制が適用されるまで猶予期間が設けられる。その猶予期間に規制をクリアする改良を施すことができればいい。
規制をクリアする手段だけでなく、規制を回避する手段も必要だ。日産「フェアレディZ」が実質的にフルモデルチェンジにもかかわらず型式を受け継いだのは、新しい規制を回避するためだと言われている。
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