トランプ政権下で「15兆円投資」を発表 ソフトバンク孫氏の思惑は?:古田拓也「今さら聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
ソフトバンクグループの孫正義氏が、米国へ1000億ドル(約15兆円)規模の投資計画を発表し、大きな注目を集めている。どのような背景や狙いがあるのだろうか。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Xはこちら
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義氏が、米国へ1000億ドル(約15兆円)規模の投資計画を発表し、大きな注目を集めている。この発表はドナルド・トランプ次期大統領との共同会見という形で行われ、会見中にはトランプ氏から「2000億ドル(30兆円)ではどうか?」とジョーク混じりに“交渉”する親密ぶりも話題となった。
両者がここまで親密な様子を見せるのは、トランプ政権下における孫氏の巨額投資はこれが初めてではないからだ。
孫氏が初めてトランプ氏に巨額投資を発表したのは2016年だ。この時は、500億ドル(当時の為替レートで約5.7兆円)の投資計画を示したことが話題となった。
トランプ氏の再登板をにらんで、1000億ドルの投資を発表した孫氏。どのような背景や狙いがあるのだろうか。
第1次トランプ政権の「成功」
ヒラリー氏が優勢と思われていた2016年の大統領選挙で、トランプ氏が勝利した直後、孫氏はトランプタワーを訪れ、米国への500億ドル規模の投資計画を発表した。この計画は、トランプ氏の掲げる「アメリカ・ファースト」政策に即したものであった。トランプ氏はこの発表を「米国経済にとっての大勝利」と歓迎し、孫氏との協力関係がスタートしたのである。
この時の孫氏の狙いは、米国通信市場で戦略的優位を確立することにあったと考えられている。当時、孫氏が保有していた通信企業の米Sprintは業績不振に苦しんでおり、競争力強化が急務だった。孫氏はトランプ政権の規制緩和方針を見越し、SprintとT-Mobileの統合を目指した。
日本の携帯キャリアに例えれば、ソフトバンクと楽天モバイルが合併するようなものと言えるだろうか。この統合は、2018年にトランプ政権下の規制当局から承認を得て実現し、SBGは米国通信市場において大手プレーヤーとしての地位を確立した。
ちなみに、現在のT-Mobile USの株価は合併当時の60ドル台から220ドル台まで高騰している。経営統合は成功と評価されていると言えるだろう。
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