もはや「300円ショップ」ではない? 踊り場にいた「3COINS」が再成長した背景(3/3 ページ)
300円均一の雑貨店として人気を博したスリーコインズ。2020年ごろは成長が鈍化していたものの、近年は再成長を遂げている。いったい何があったのか。
松戸店はイトーヨーカドーも入居する駅チカの商業施設「プラーレ松戸」の一角にある狭い店舗だ。調理器具や洗濯用品、日用品の他、女性が使うアクセサリーなどをそろえる。いずれもチープな感じはなく、実用的なデザインだ。全体的に300円の商品が多いが、少し質の高そうな商品は500円や1000円に設定している。高価なものでは2000円の鍋があった。
対する西銀座デパート店は、全体的に広い印象を受けた。大型化している分、より多く陳列していると思いきや、通路は通常の3COINSより広々としていて歩きやすい。商品の幅も広く、松戸店にはない菓子やレトルトカレーといった食品や、トラベルグッズなどを取り扱っている。「3COINS MEN」と称する男性向けコーナーもあり、500円の小銭入れや、高いものだと5000円のヘッドホンを陳列している。
筆者の主観も含むが、手に取りたくなるような商品は300円より高く、気になる中で300円の商品を見つけるのが難しかった。3COINS+plusの競合は、大創産業の300円ショップ「Standard Products」よりも、無印良品に近いといえるのではないか。3COINS全体では、2015年ごろから祖業の300円均一を取りやめ、現在では4割が300円より高い商品である。価格の高い高品質の商品も、近年の好調をもたらした可能性がある。
今後も大型店へのシフトが進みそう
3COINSと3COINS+plusを数字で比較すると、前者のアイテム数が3000前後であるのに対し、後者は4000アイテム。客単価も、3COINS+plusが約1000円で、3COINSより120円高い。購入点数は後者の方が2割多いという。
都内47店舗の内訳では、3COINSと3COINS+plusが半々(12月17日時点)。しかし、10月末時点で3COINS+plusはすでに全体の8割弱を占めている。近年では大型店の新規出店を進めたほか、既存店を3COINS+plusに切り替える形でリニューアルを進めている。地方では今や、従来型の3COINSを探す方が難しい。近年の好調は規模拡大のほか、3COINS+plusへの転換に伴う客単価の上昇も寄与していると考えられる。
カワイイ路線を取りやめ、食品など商品ジャンルも広げた3COINS+plusは、もはや以前のような300円均一業態ではない。500円、1000円以上の商品も取り扱い、日用品関連では無印良品に近い業態となっている。リブランディングした3COINSがどこまで伸びるのか注目が集まる。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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