「おせちの絵本」が異例の9万部超え 『ぐりとぐら』出版元が手掛ける、写真超えたリアルさが話題に:“お正月ならでは”の背景も(3/3 ページ)
福音館書店が11月に刊行した絵本『おせち』が、担当者も驚く売れ行きを見せている。写真と見紛うような写実的な絵で話題の同書。ヒットの背景には、“お正月ならでは”の理由もあるようだ。
“お正月ならでは”の背景も
“祖父母世代”が多く関心を寄せている点も特徴的だ。「おじいちゃんおばあちゃんも意外に知らず、『私たちにも勉強になる』と喜んで読んだ」「自分は子育てを終えたが、子育て世代に渡したい」という声も見られるという。
「華やかさもあり、おめでたいテーマの本なので『手元に置きたい』と思ってくださる方が多いです」「幸せを願う気持ちは共通なので、プレゼント用に何冊も買ってくださる方もいますね」――そう大島さんと関根さんは話す。“人が集まる時期”でもあり、おめでたい行事である「お正月」を取り上げたことも、間口を広げた一因だったようだ。
「いろいろな世代がつながれるテーマだったのかもしれないなと。初めから狙ったわけではないのですが、読者からの声を聞いて気付きました(笑)」(関根さん)
シンプルさも強みに
購入のきっかけや用途は幅広く、「『これ写真じゃなくて絵なの?』と気になって購入した」「自分は食べないけれどお正月の設(しつら)えとして飾っています」という声もあったとのこと。写実的な絵を採用したほか、余白を多く残すなど「絵巻を意識した」というシンプルな作りとしたことも、楽しみ方をさまざまに広げた一因だったようだ。
NHKテキスト『きょうの料理』といったレシピ本と一緒に並べる書店もあるなど、展開のバリエーションも幅広い。
しかし、『おせち』はあくまで「子どもたちに向けて作った本」だと話す関根さん。今回のヒットについても「『本物』を届けるという意識で作った絵本が、大人の鑑賞にも耐えるものになった」結果だと捉えており、今後も子ども向けに“和の魅力”を伝えるようなコンセプトの絵本を手掛けていきたいという。
「『おせち』もこの先、『年末になったらこれを読もう』と、長く手に取ってもらえる絵本になればと思います」(関根さん)
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