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押し寄せる「アマゾンビ」、“家の中”まで届けるWalmart――2024年米リテール市場で、何が起きていたか石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/2 ページ)

2024年の米国リテール市場は、AIや自動化、そしてサステナビリティを軸に進化を遂げた一年だった。WalmartやAmazonといった巨人たちが技術革新で市場をリードする一方で、日本発のGUのような新興プレイヤーが果敢に挑む姿も注目を集めている。そんな今年のリテール業界の動向を順に振り返る。

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連載:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線

小売業界に、デジタル・トランスフォーメーションの波が訪れている。本連載では、シリコンバレー在住の石角友愛(パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナー)が、米国のリテール業界の最前線の紹介を通し、時代の変化を先読みする。

 こんにちは。パロアルトインサイトCEOの石角友愛です。今回は2024年最後の記事ということで、今年の記事を振り返り、未来の買い物体験を形作る今年の主要な動向を総括したいと思います。

 2024年、米国リテール市場はAIや自動化、そしてサステナビリティを軸に進化を遂げた一年でした。WalmartやAmazonといった巨人たちが技術革新で市場をリードする一方で、日本発のGUのような新興プレイヤーが果敢に挑む姿も注目を集めています。

 そんな今年のリテール業界の動向について、順を追ってみていきましょう。


米国のリテール市場は2025年どう進化する? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

Walmartの目指す顧客体験――「未来の買い物」は家の中まで届く

 Walmartが目指す未来の買い物は「手間ゼロ」。AIやドローンを駆使した便利さは、まさに生活革命です。例えば「In Home Replenishment」という新サービスでは、AIが日用品の消費ペースを学習し、洗剤や牛乳がなくなるタイミングを見計らって自動で補充。驚くべきは、Walmartのスタッフが冷蔵庫や棚に商品を直接しまってくれるという点です。

 これは、身体の不自由な人やお年寄りの方々にとって、大きな助けになるサービスではないでしょうか。ホリデーシーズンの12月現在、Walmartの公式Webサイトでは「信頼できるWalmartアソシエイトがお買い物や開梱作業を行いますので、今年のホリデーシーズンはより多くの時間を自分のために使うことができます」と宣伝しており、多くのユーザー獲得が期待できるといえます。

 さらに、アプリの検索機能もAIによって大幅に進化しています。例えば「パーティー用品が必要」と入力すると、スナックや紙皿、ドリンクが一気にそろいます。これまでのように、カテゴリーごとに探し回る必要はありません。2024年のWalmartは、買い物のストレスを徹底的に削り取る存在として進化を続けています。

 配送サービスも革新的です。全国規模で展開されるドローン配送は、特定の地域で最短10分の即時配達を実現。買い物という行為そのものが「クリックして待つだけ」の世界になりつつあります。

(関連記事:レジ待ち不要、商品を「冷蔵庫にしまってくれる」?――Walmartの顧客体験はここまで進化する

Amazonファーマシー――薬局ビジネスのディスラプター

 2024年のAmazonは、薬局という領域に注力し、大きな存在感を発揮しています。オンライン処方サービス「アマゾンファーマシー」は、医師が直接デジタルで処方箋をAmazonに送り、アプリを通じて薬を注文できる仕組みを展開中です。家にいながら最短数時間で薬が届く便利さは、忙しい現代人や慢性疾患を抱える患者たちに支持されています。

 2024年10月の米紙USAトゥデイの報道では、Amazonは2025年末までに、米国の顧客の45%に当日配達を提供する計画だということが明らかになっています。これにより、例えば顧客が午後4時までに薬を注文すると、午後10時までに自宅で受け取れることになるため、米国の顧客にとっては大きな利便性向上が期待されています。

 さらにAIを活用した価格透明性の向上も見逃せません。Amazonは保険適用後の価格やクーポン割引など、複数の選択肢を瞬時に提示。最もお得なオプションを簡単に選べるようにしています。この取り組みは、健康管理の質を高めるだけでなく、薬局業界に大きなプレッシャーを与える存在となりました。

 配送でも進化は続きます。地域ごとに適した方法を採用し、例えば渋滞が多い都市部では電動バイク、郊外ではドローンを活用するなど、薬が必要なときに確実に届く体制を整備しています。Amazonは、薬局業界における「ディスラプター」(破壊者)として存在感を高め続けており、2025年の動向も注目です。

(関連記事:なぜ、アマゾンは「薬局ビジネス」に注力するのか? 競合の“破壊者”となる生成AIの実力

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