企業負担ナシで“実質賃上げ”──手取りを増やす、マネフォグループの裏ワザ的サービスとは(2/2 ページ)
企業の負担は「実質ゼロ」で、従業員の手取りを年数十万増やす──政治の「手取り増」のアプローチが注目を集める中、マネーフォワードグループが買収したスタートアップは、このようなサービスを提供している。どのような仕組みなのか?
マネフォが人事戦略で買収 福利厚生の新潮流に
現在の年間売上高は約3000万円。コロナ後に法人向けサービスへと転換してから、シャトクの成長は加速している。マネーフォワードグループ入りを果たすことで、事業拡大を本格化する。
「給与計算や勤怠管理などの人事労務システムはすでに提供していたが、福利厚生領域は未開拓だった」。マネーフォワードの駒口執行役員は買収の狙いをこう説明する。マネーフォワードは人事労務サービスを含め、すでに17万社以上の企業に各種バックオフィスシステムを提供。この顧客基盤を生かし、福利厚生賃貸サービスの普及加速を目指す。
シャトクのシステムとマネーフォワードの給与計算システムを連携させることで、導入企業の事務負担をさらに軽減できる。同社のAPIを活用すれば、給与控除額の自動計算から仕訳処理まで一気通貫で処理可能になる。人事部門の作業時間は従来の10分の1程度に削減できるという。
人材定着への効果も期待される。マネーフォワードの調査によると、福利厚生賃貸の利用者の離職率は平均の3分の1にとどまるという。「福利厚生を通じて従業員の実質収入を増やす取り組みは、人材確保が課題の企業にとって重要な武器になる」と駒口執行役員は話す。
すでに数百社に導入実績があるものの、日本の賃貸住宅居住世帯は約1700万世帯。「まだ市場の1%にも満たない」(千葉氏)という現状は、大きな成長余地を示す。マネーフォワードは2025年11月期以降の業績への貢献を見込んでおり、グループ全体の成長ドライバーの1つとして期待を寄せる。
「企業も従業員も、制度をよく知らないだけでメリットを逃している」。千葉氏はこう指摘する。「手取りを増やす」ことに関する政治の動きが注目される中、企業レベルでできる施策も存在する。企業が追加コストなしで実現できる「手取り増」の選択肢は、まだまだ眠ったままだ。
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