突然、普通の街が観光地に! インバウンドが押し寄せる「ニッチ観光地」から考える日本観光のあり方(5/5 ページ)
インバウンド増加で、ニッチな場所が「観光地化」している。それによる観光公害が発生する中、私たちに必要な考え方とは。
景観保護的には「ダメな景色」は、むしろ「強み」?
日本でこうしたカオスな風景が生まれたのはなぜか。一つには、これまでの日本における行政の「縦割り」が影響していたと考えられる。道路と住宅、あるいは公園などがそれぞれ別のスキームで開発され、街全体としての統一感を生み出すことに失敗してしまったのだ。
また、日本では土地に対する個人の所有権が強く、その土地の所有者であれば実質的にどのような建物でも建てることが可能である。そのため、街並みを俯瞰(ふかん)して見たときに、公的なコントロールが効いていないような印象を与える。逆に、近年盛んに再開発が行われた地域は、ある程度行政がコントロールできた結果、カオスさは薄れている。
こうしたカオスさは、これまで日本の街並みの弱点とされてきた。しかし、そうした「不完全さ」が、近年インバウンド観光客を惹きつけているのかもしれない。
前述の「富士山ローソン」も例外ではない。海外であれば、富士山のようなランドマークが見える場所には、景観保護の観点から建築規制がされる場合が多い。一方で日本の場合は、先のような事情から、「コンビニ×富士山」という思わぬ掛け算が生まれてくる。景観保護の観点からいえば、これは明らかに「ダメな景色」だ。しかし、逆にそれが観光客の興味を惹いていることをみると、景観の統率や保護ができないという「日本の弱点」が生み出した光景が、逆に「強み」になっているのかもしれない。
もちろん、本記事で例示したものは、インバウンド観光客が感じる日本の魅力の一部でしかない。年齢や性別、出身国などによって、好みは大きく変わるはずだ。しかし、まずはニッチ観光地の誕生による諸問題に対応していくためにも、「インバウンド観光客が、日本の何に魅力を感じているのか」を考え、議論すべきである。それは、これから日本のさまざまな場所がニッチ観光地となる可能性があるなかで、欠かせない視点ではないだろうか。
著者プロフィール・谷頭和希(たにがしら かずき)
都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。
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