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ココイチはなぜ、つけ麺・ジンギスカン・もつ鍋に挑むのか?:マーケティング戦略の観点から分析(2/7 ページ)
カレーで有名な「ココイチ」を展開する壱番屋。シナジー効果が見込みづらい新業態に進出する意図は何なのか?
カレーという「金のなる木」を持つ強み
マーケティング理論のひとつである「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」では、企業がもつ事業やブランドを「花形(スター)」「金のなる木(キャッシュカウ)」「問題児(クエスチョン)」「負け犬(ドッグ)」の四象限に区分し、それぞれに異なる投資・成長戦略を当てはめるのが原則とされている。
まず前提として押さえておきたいのは、ココイチのカレー事業が、シェア・認知度ともに高く安定的な収益をもたらす「金のなる木」である点である。カレー専門チェーンとしての強固なブランド力と、日本国内外で長年フランチャイズ展開を続けてきた実績から、壱番屋は外食産業のなかでも比較的安定したキャッシュフローを有していると推察できる。
実際、壱番屋の決算公告によると、飲食業界全体がコロナ禍の影響で厳しい業績となるなかでも、ココイチの既存店の売り上げは比較的堅調に推移していた。立ち食いそばやハンバーガーなどと並び、単価と回転率のバランスが良いカレーは、景気変動に強い外食メニューの代表的存在でもある。こうした背景から、壱番屋はカレー事業という強固な土台を持ちながら、さらなる成長エンジンをどこに見出すかが経営課題になっていると考えられる。
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