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ココイチはなぜ、つけ麺・ジンギスカン・もつ鍋に挑むのか?:マーケティング戦略の観点から分析(5/7 ページ)
カレーで有名な「ココイチ」を展開する壱番屋。シナジー効果が見込みづらい新業態に進出する意図は何なのか?
ポートフォリオマネジメントとしての「問題児」の意義
企業の中長期的な成長を図るうえで、既存の「金のなる木」に依存し続けるだけでは限界がある。特にカレー専門チェーンとしての国内市場はほぼ飽和状態にあり、大きなブレイクスルーは見込みにくい。そこで「金のなる木」が稼ぐ間に、成長率は高いがまだシェアが十分でない「問題児」を複数育成し、その中から将来「花形」となる業態を生み出そうという構図である。
このアプローチは、成功確度を高めるうえでも合理的だといえる。飲食業界は消費者の嗜好の変化やトレンドの影響を強く受けるため、どの業態が当たるのかを事前に完璧に読み切ることは難しい。最初から一つの業態に集中投下してしまうと、失敗した際のリスクが大きい。複数の新業態を試験的に立ち上げ、どれかが市場にフィットすればそれを一気に伸ばす。こうした「試行回数を増やす」という手法は、不確実性が高い状況では有効な手段である。
事実、大手外食グループでは、牛丼の「すき家」やファミレス「ココス」を展開するゼンショーホールディングス、居酒屋「甘太郎」や回転寿司「かっぱ寿司」を展開するコロワイドのように、多業態によってリスク分散を図る動きが一般化している。ココイチという単一業態のイメージが強かった壱番屋も、同様の流れに乗ることで、経営の安定性と将来的な成長余地を確保したい意図があると考えられる。
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