脱「牛丼一本足」進める吉野家 カレー、から揚げ、おにぎり、ラーメン、どこまで広がる?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
牛肉価格の高騰などを受けて、牛丼一本足打法からの脱却を進める吉野家。今やポートフォリオは非常に多岐にわたる。それぞれの戦略をまとめていく。
から揚げにダチョウ 牛からの分散を進めてきた
吉野家は牛丼で使う肉について、秘伝のたれに合う米国産のバラ肉にこだわっている。このこだわりの強さが、競合のすき家や松屋と比べても熱烈なファンを持つゆえんでもあるだろう。一方、すき家では牛丼(並盛)が450円、松屋では牛めし(並盛)が430円で、吉野家の割高感は否めない。
近年、米国産牛の値上げはすさまじい。日本食肉流通センターが発表した「最近の食肉をめぐる状況」(2024年3月報告)によれば、2020年1月を起点(100)としたUSチルドショートプレート(トモバラ)の価格指数(首都圏)は、2021年10月に160近くに上昇。
一時的に落ち着くものの、円安の影響で2023年10月には再び160辺りまで上昇している。吉野家としてみれば、利益を出すために、これ以上の値上げが難しい牛丼以外の商品をなるべく売っていきたい状況だろう。
振り返れば、既に2022年から牛丼に並ぶ第2の主力商品にから揚げを位置付け、宣伝にも力を入れてきた。そうした“畜種分散”の一環として、傘下のSPEEDIA(スピーディア)という会社では「オーストリッチ」、すなわちダチョウの飼育、商品開発に着手。店舗限定だが、2024年8月に「オーストリッチ丼」を約6万食を上限として販売した。
カレーにも本格的に力を入れてきた。1月16日から、東京・大久保の行列が絶えない人気カレー店「SPYCY CURRY 魯珈」が監修した、「牛魯珈カレー」(729円)、「肉だく牛魯珈カレー」(839円)を期間限定で販売している。魯珈といえば、大手チェーンとのコラボ実績が豊富な有名店。従来の吉野家のカレーと違う、専門性の高いスパイスカレーのメニューだ。
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