2015年7月27日以前の記事
検索
コラム

ドンキ「みんなの75点より、誰かの120点」が、マーケティング戦略的に正しいワケ(2/4 ページ)

一見するとリスクの高い挑戦が、成功したのはなぜか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

風変わりな商品が人気に

 偏愛めしの商品群を見ると、どこか“普通”の発想では企画されにくいメニューが並び、一目で「これは偏愛だ」と分かる個性的なネーミングやコンセプトが際立つ。例えば、以下のようなラインアップが代表的である。

フライドチキンの皮だけ


フライドチキンの皮だけ(322円、提供:PPIH 以下同)

 ドンキいわく、累計15万個突破の人気商品である。「チキンの皮だけが食べたい!」という強い欲求を形にした一品だ。フライドチキンの皮特有のスパイス感と油のうま味がビールとの相性抜群で、夕食の一品やおつまみとして活躍する。世の中には「フライドチキン本体より皮が好き」という層が一定数存在し、彼らにとっては“待ち望んだ理想の商品”となったのだろう。

アメリカンドッグのココだけ


「アメリカンドッグのココだけ」(171円)

 発売からわずか1カ月で1万7000個を売り上げたヒット商品。アメリカンドッグ好きにとっては“希少部位”ともいえる根元のカリカリ部分だけを集めたという発想が秀逸である。サクサクとした食感とほんのり甘い生地がクセになり、スナック感覚でも楽しめる。ケチャップやマスタードで味変が楽しめる点も魅力だ。

カップ焼きそばのかやく丼


カップ焼きそばのかやく丼(430円)

 カップ焼きそばで味わえる“ソースのしみたキャベツ”を主役に据えた新感覚の丼ぶり。濃厚なソースがしみ込んだキャベツをフリーズドライで再現し、マヨネーズとふりかけをトッピングすることで、あの“カップ焼きそば特有のフニャッとした食感”を忠実に再現した。「容器に張り付いたキャベツを思う存分食べたい」という担当者の偏愛が形になった商品である。ご飯が進む“罪深い”味わいが特徴だ。

昭和の鉄板風ナポリタンドッグ


昭和の鉄板風ナポリタンドッグ(322円)

 ドンキとタレントのテリー伊藤氏のコラボから誕生した“昭和レトロな喫茶めし”をワンハンドで楽しめる一品。しっとりとしたケチャップまみれのナポリタンをドッグロールに挟むことで、懐かしい味わいを手軽に頬張れる。2024年8月発売の「黄金おにぎり」に続く“テリー伊藤の偏愛めし”第二弾として、テリー氏の番組企画と連動して生まれた。ケチャップ好きにはたまらないレトロ感である。

のり塩ポテトサラダ


のり塩ポテトサラダ(214円)

 まるでポテトチップスの「のり塩」味がそのままサラダになったかのような新感覚メニュー。海苔=磯の風味を徹底的に引き出すために青のりをたっぷり使用し、濃厚な磯の香りが口いっぱいに広がる。ビールとの相性も抜群で、「普通ののり塩では物足りない」という人にこそ刺さる一品となっている。

黒の誓約パスタ


黒の誓約パスタ(495円)

 イカ墨を麺にまで練り込み、ソースも含めて真っ黒に仕上げたイカ墨パスタ。“唇が真っ黒になろうが構わない、それが食べた証!”という本物のイカ墨好きにささげる、濃厚かつニンニクが効いた食べ応えのある一品である。外食の場だと気が引けるイカ墨パスタを、家で存分に楽しむための発想が見事に商品化されている。

 これらの商品は「とにかく自分が好きな要素を極限まで詰め込んだらこうなった」という印象で、“みんなにそこそこ受ける”無難な設計とは一線を画している。結果として、狙い通り“特定層の熱い支持”を得るに至っているわけだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る