「昔ながらの名車風」なぜ人気? 自動車メーカーが“過去の遺産”を利用する理由:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したホンダのフリードのように、近年はクルマのデザインの優先度が高くなった。昔からクルマのスタイリングは重要な要素だったが、機能性で差別化しづらくなった今こそ、さらにデザイン性が問われる時代になっている。
海外メーカーも“過去の遺産”を利用する傾向
1990年代の終わり頃、フォルクスワーゲン(VW)が名車・タイプ1をモチーフにしたボディを、ゴルフのプラットフォームの上に載せたニュービートルをリリースすると、たちまち人気モデルとなった。これはデザイン性が高いだけで、実用性や取り回しは決して優れていなかったが、長い間人気を博した。
最近ではEVで、タイプ2バスをモチーフにしたID.Buzzを発売。EVの受注の7割を占めるほどの人気を集めている。
VWのニュービートルと同じ頃、ローバー・ミニはBMWミニとしてブランドを継承し、デザインのテイストや乗り味にミニらしさを感じさせるクルマとして再構築した。さすがに最近はモデルチェンジごとに元のイメージは希薄になり、「ミニとは何ぞや」という気もしてくるが、デザイナーも伝統と新しさの融合に苦労しているのであろう。
米国車でも、クライスラーが1950年代のクラシックカーのテイストを盛り込んだPTクルーザーをダッジブランドで販売した実績があり、かつてのマッスルカー(大排気量でパワフルなモデル)を再現したダッジ・チャレンジャーなどがマニアには人気を博している。
フォードは、マスタングを初代モデルに先祖返りさせたようなデザインに改めた結果、大ヒットした。現在のモデルもそのテイストを受け継いでいる。日本ではフォードが撤退してしまったため並行輸入されるにとどまるが、根強い人気を誇る。ゼネラルモーターズもシボレー・カマロを初代のイメージにモデルチェンジして人気を取り戻した感がある。
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