連載
「昔ながらの名車風」なぜ人気? 自動車メーカーが“過去の遺産”を利用する理由:高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)
日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したホンダのフリードのように、近年はクルマのデザインの優先度が高くなった。昔からクルマのスタイリングは重要な要素だったが、機能性で差別化しづらくなった今こそ、さらにデザイン性が問われる時代になっている。
ヒョンデのINSTERはスマッシュヒットとなるか
韓国のヒョンデは今年の東京オートサロンで、アイオニック5Nをモディファイしただけでなく、新型車としてコンパクトSUVのINSTER(インスター)を披露した。これは価格も手頃なEVで、航続距離も十分にあり、なおかつ角を丸めたスタイリングと丸型ヘッドライトをイメージしたフロントマスクが何ともかわいらしい。これは女性ユーザーの人気を集めそうだと感じた。
スズキはワゴンRスマイル、アルトラパン、ハスラー、ジムニーといったモデルで丸型ヘッドライトを採用したレトロ調のデザインを取り入れて人気を集めている。ダイハツはムーブキャンパスを2代にわたって販売してきたが、現在はレトロ調のモデルは一区切り付けた印象だ。
そもそも丸型ヘッドライトが廃止されていったのは、空気抵抗を軽減するためにフロントマスクを薄く低くするためだった。それが技術革新により、個性的なデザインや丸いライトを盛り込みながら、燃費性能も高める仕立てが可能になったのだ。
だが、丸型ヘッドライトだけがレトロな要素として有効なのではない。米国車などは四角いヘッドライトも古くから使われてきた。そんな当時のデザインを盛り込むことによって人気を博しているパイクカーも増えている。
こうしたムーブメントを見逃すまいと、さまざまな企業が多様なアプローチで参入しているのが、昨今のレトロ調カスタム界隈(かいわい)なのである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
2人乗車はなぜ難しい? 超小型モビリティ「Lean3」が日本では1人乗りの残念な事情
2024年のジャパンモビリティショー ビズウィークで注目されていたのは「Lean3」という小型モビリティ。2人乗車仕様の販売を実現するには、まだ手探りの状況だ。官民挙げて超小型モビリティを普及させ、ビジネスを広げていってほしい。
なぜテールランプがまぶしいクルマが増えているのか クルマづくりに欠けている視点
前走車のテールランプをまぶしく感じることが増えた。平時にリアフォグランプを点灯するのは問題外だが、ブレーキランプの規制変更によるデザイン性の追求という要因もありそうだ。環境性能や安全性だけではなく、周囲に配慮する工夫もますます必要になるだろう。
セダンが売れる時代はもう来ないのか クルマの進化で薄れていく魅力
SUVやミニバンと比べて、セダンの人気は衰退している。目新しさが魅力だったSUVも走行性能などが高められたことに加え、ドライバーの意識も変わっている。スポーツカーも衰退しているが、所有して運転する楽しさを追求できるクルマも必要だ。
クルマの“顔つき”はどうやって決まる? デザインに表れる思惑とは
自動車のフロントマスクは各メーカーにとって重要な要素だ。ブランド戦略によってその方針は異なる。海外メーカーには、デザインの継承を重視しない姿勢も見られる。一方、国内メーカーも方針はさまざまで、デザインから各社の思惑も見えてくる。
ファンが沸いたプレリュードとロードスター、ホンダとマツダの“次の一手”は?
今年も東京オートサロンが開催された。カスタムカーの祭典というよりは、多様なメーカーのブースが台頭し、幅広い領域の展示が見られるイベントになってきた。各社がファンを喜ばせる展示を用意。工具メーカーも盛況だった。まだまだ人気は衰えそうにない。

