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ラミちゃんに聞く「低迷したチームの立て直し方」 野球に学ぶチームビルディングの肝は?(2/2 ページ)

横浜DeNAベイスターズの監督を務めたアレックス・ラミレス氏率いる日本チーム「ジャパンブリーズ」が、中南米の国際大会「カリビアンシリーズ」に参戦する。監督は低迷した際にチームをどのように立て直せばいいのか? ラミちゃんのマネジメント論を聞いた。

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イチロー氏、松井秀喜氏に対するラミレス監督の意見

 2024年12月に放送したドキュメンタリー番組「情熱大陸」(MBS・TBS系)では、イチロー氏と松井秀喜氏が対談し「MLBでのデータ重視の野球は、観戦していて面白くない」と話していた。イチローは、一つ一つのプレーについてデータに頼るあまりに、選手が自分の頭で物事を考えなくなることによって、感性が失われることを危惧している。この話をラミレス監督にぶつけると「私は以前から8割がデータで、2割がフィーリングだと言ってきました」と話す。

 「私もイチローさんが言っている意味はよく理解できます。確かに、考えなくなる面はあるのかもしれません。ただ『数字がこう言っているのであれば、それを信じてやる』というのが私の信念です」

 その上で、データを解析する力、読み解く人間の能力が必要になってくると強調した。「数字というデータを調べること自体が、その人が自らの頭でいろいろと考えている証拠ですから」と話す。

 「そのうちAIが、今日の相手投手を分析して打順を決めるようになるかもしれませんね」と笑う。それは選手にも、究極の二者択一を突き付けるかもしれない。「野球を含めたどのスポーツも進化していますよね。AIを絡めた進化に対して、がんばってその流れについていくのか。それとも野球を諦めるのか。二つに一つになっていくでしょう」

 その流れは、監督の立ち位置にも変化を与えるという。「AIは人間ではないですし、野球をプレーするわけでもありません。ただAIは、人間よりも大量のデータを分析できます。そうなると、AIと人間との間での“交渉の余地”はないでしょう。やがて監督は『スーパーバイザー』という立ち位置に変わると思います」

 「データ野球は、野球の面白さや醍醐味からかけ離れ、勝負に徹することでチームの価値を高めていきます。よりビジネスの方に走っている印象です。利益のためならルールも変えていくし、AIもどんどん使っていく。その流れは止められません」

 ビジネス重視の状況については「仕方ない」と話す。「それがトレンドですから。このMLBのデータ重視の波は、いずれ日本にもやってきます。現実的に米国では、さまざまなルールが変わっていますから。日本が、その流れを拒否できるかどうか。大きな課題でしょう」


AIが進化した未来に「監督はやがて『スーパーバイザー』という立ち位置に変わる」と話したラミレス監督(筆者撮影)

資金集めに奔走 Rチャンネルで独占ライブ配信が決定

 ラミレス監督は、ジャパンブリーズの経営にも関与する。特にスポンサーを中心とした資金集めには、苦労したようだ。「正直、とても大変でした。テレビ放送の可能性も探ったのですが、世の中ではまだまだカリビアンシリーズの認知度が低いため、現状(1月11日のインタビュー時点)では決まっていません。そうなると、スポンサーを探すハードルも上がります」

 その後1月31日に、Rチャンネルでジャパンブリーズ戦の独占ライブ配信が発表された。「経営者ラミレス」が、最後の最後まで粘った跡が見える。自らのYouTubeチャンネルでも宣伝したクラウドファンディングについては、目標金額(300万円)の76%にとどまる結果に。「選手のためにという気持ちでやっていたんですが、初めてということもあり、うまくいかないところはあったかなとは思います」

 長期目標を達成するには、まずは今回のカリビアンシリーズで結果を出し、チームの知名度を上げるしかない。「その通りです、選手が素晴らしいパフォーマンスを見せてくれればSNSなどを通じて広がる可能性もあります。注目されるようになれば、興味を持つスポンサーがもっと出てくると思っています」

 日本人選手には、中南米で野球をプレーするという発想がほとんどない。「日本の独立リーグの選手が、セカンドキャリアとして、中南米のチームと契約して活躍すれば、最終的にはカリビアンシリーズもより魅力的なコンテンツになり得ます」

“ラミちゃん流”マネジメントは「基本に忠実」

 ラミレス監督はチーム作りにおいて、長期目標を設定しつつ、そこに向かうための小さな目標を一つ一つ設定する。その際に「一つ一つのプロセスを飛ばしてはいけない」と語った。地味な練習や作業を一つ一つこなす基礎固めこそが、成功への近道だと教えてくれる。 

 一方、データやAIを積極的に活用する姿勢も持つ。時流もしっかりと捉えているのだ。つまり彼は「やるべきことをやり」「活用するべきものは活用する」という奇をてらわない基本に沿ったチーム作りをしている。あとはマネジメントにおいて、上に立つ者が、その基本をしっかり部下に遂行させることができるのか。そこがキーとなる。

 チームが結果を出せずに低迷した際、今までにない斬新な施策を考え、実行しようと考えるマネジャーも少なくないだろう。ただ、ラミレス監督に倣えば、まずは長期目標を設定してメンバーにその意味をいきわたらせる。その次に、現実的な短期目標を設定することで、やるべきことを実行させるのが“ラミちゃん流”のマネジメント手法のようだ。カリビアンシリーズで、その手法がどこまで通用するか。


チームメンバー

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