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自転車と歩行者の衝突をゼロに 東京・狛江市が編み出したユニークな解決策とは?ナッジで変わる人・まち・企業(2/2 ページ)

東京都狛江市では、駅前で歩行者と自転車の衝突事故をなくすため、自転車の利用者に「おしチャリ」を促そうとナッジの手法を取り入れました。その結果、どのような効果がうまれたのでしょうか?

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Q.最もこだわったポイント、大変だったポイントは?

 「おしチャリナッジ」Pjを進めていくなかで最も大きなポイントになったのが、「駅前に滞在する市民がナッジの仕掛け側に回る行動デザイン」でした。

 行政が使うナッジの場合、「市民の行動変容を促すために、行政が市民に直接アプローチする」ことが一般的ですが、このPjでは、「行政は、駅前に人が滞在しやすい環境としくみを整えるところまでを行い、そこに滞在する市民の間に生まれるコミュニケーションがナッジの“しかけ”となって、自転車利用者が自然と自転車から降りる」といった行動変容につながっています。

 また、この本棚の本はすべて市民に持ち寄ってもらい、かつ、それぞれの本に持ち主のメッセージを付箋で貼ってもらったことで、本を持ってきた方とその本を手にした方との間接的なコミュニケーションが生まれる空間になり、駅前の滞在時の快適性も向上しました。


駅前の滞在時の快適性も向上

Q.要した期間、人手、コストは?

 このPjの立ち上げから実証実験までの準備期間は概ね3カ月で、この間、市職員9人と地元デザイナー2人によるプロジェクトチームを組成し、ワークショップ形式のミーティングを5回実施しました。

 また、本Pjの効果測定のための交通量調査と通行者へのインタビュー(事前・事後)は、プロジェクトチームのメンバーで分担して行いました。


交通量調査と通行者へのインタビュー

 なお、今回、使用した什器の調達、告知用のKV制作、消耗品などで10万円程度の実費が掛かりましたが、ベンチと本棚は地元デザイナーが所属する地域団体がDIYで作成したものを借用することでコストの縮減も図りました。

Q.今後は?

 「おしチャリナッジ」Pjは、2023年12月に行動経済学会で開催されたベストナッジ賞コンテスト2023で、学会への来場者の投票が最も多かった「オーディエンス賞」を受賞しました。

 その後、本市におけるナッジや行動デザイン視点の施策の展開は、このときのPjのメンバーが母体となった庁内ナッジユニット「狛江ナッジ・ラボ」で既に進められています。


このPjメンバーが母体となった庁内ナッジユニット「狛江ナッジ・ラボ」が施策の展開を進めている

 また、狛江駅前に関しては「みんなが使う公共空間は、みんなでつくっていく」という意識を市民と共有して、そこに向けた行動変容に自然とつながる形で、ゴミのポイ捨てや路上喫煙の防止も含めた駅前の環境美化全般にも、ナッジを活用していきたいと考えています。

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