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大谷翔平を育てた名将・栗山英樹 マネジメント術と「リーダーの思考」に迫る(2/2 ページ)

大谷翔平を“二刀流”として育て、WBCでは侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹。名将が語ったマネジメント論とリーダー論とは?

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イチロー「データ野球は人間の感性を奪う」 栗山の見解は?

 最近、日米で野球の殿堂入りを果たしたイチローは、あるドキュメンタリー番組でMLBの行き過ぎたデータ野球について「人間の感性が失われる」と懸念していた。データと人間の感情のバランスについて栗山CBOは、どんな見解を持っているのか。「チームとしての大きな課題です。(データと人間の感性は)両方とも必要で、それをどう扱うか? どう処理するか? という時代に来ていて、日本でも、それが問われています」

 日本ではまだ、データを分析するアナリストと、従来のやり方をしてきた指導者との間で大きな論争は起こっていない。だが、いずれ近いうちに、その時代はやってくる。「球団として、なるべく先入観なく働いてもらう環境を作っていますが、バランスをどう取ったらいいのかは、自分の中でも大きな命題です」

 野球の長い歴史の中で、初めて大きなイノベーションが起こっている実感があるという。「要するに『正しい』はないんです。今の状況で私たちは何を選択するべきなのか。これはいつも議論しています。結局はトライアンドエラーなのです。失敗してもいいから、やってみる。そうしないと分からないんです。思い悩みながらも、責任を持って前に進めているつもりです」と話し、上に立つ者の覚悟が見えた。

 『栗山英樹の思考』では、好きな著書として、京セラとKDDIを創業し、JALの経営再建を成し遂げた稲盛和夫の『生き方』(サンマーク出版)などを挙げていた。経営者の書籍は、栗山CBOのマネジメントに、どう生きたのか。

 「僕のテーマは『選手に接する形として、本当に選手のためになることを伝えられているのか?』です。リーダーとして厳しく接したほうが良いと考えていました。というのは、僕らは球団からクビになれば終わりますが、経営者は、従業員と家族の人生を背負います。リーダーになる人は、その覚悟を持ってやりなさいという意味だと解釈しています」

 厳し目に指導することによって、自立した選手を育てられると考えているようだ。

日本人が得意でなかったことを実践している

 栗山CBOは、最善の結果を導き出すために思考し続ける人なのだろう。そのために、選手一人一人の特徴や性格まで把握をして、話し方も変える。「一見できそうで、実はできない作業」をしているのだ。リーダーとして責任を取るという覚悟も持っている。

 日本の組織論では、責任の所在が明らかでないことや、責任を誰も取らないことが多く指摘されている。栗山CBOは、日本人があまり得意ではなかったことを実践していると感じた。だからこそ、監督として実績を残せたといえそうだ。

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