採用試験で「生成AI」使ってOK AI時代の新たな採用戦略を知る:5社に1社が採用活動に生成AI導入
いまは5社に1社が採用に生成AIを活用している。採用試験で生成AIを使ってもOKなど、変化する採用市場のトレンドを解説する。
著者:芦野 成則
レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー
一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施
IT人材不足が深刻化する現代、採用活動は企業の存続と成長を左右する重要な役割を担っています。このような課題に直面する中で、注目を集めているのが生成AIの活用です。近年、生成AIが採用活動のさまざまな場面で活用され始めており、従来の採用活動の在り方が変わりつつあるといえるでしょう。
本記事では、IT人材の採用における生成AI活用の実態や変化について解説します。
生成AI、採用プロセスの「どこ」で使われることが多いのか?
実際に、採用活動に生成AIを導入している企業はどの程度存在するのでしょうか。
レバテックがIT人材の採用担当者を対象に過去に実施した調査(PDF)では「導入している」と回答した方が20.6%、「今後導入を検討している」と回答した方が36.3%に上りました。注目の高さがうかがえます。
導入目的としては「求人票の作成」(46.1%)、「採用計画の立案」(41.3%)、「スカウト文の作成」(40.3%)などが挙げられ、多岐にわたる目的で活用されていることが分かりました。求人票の作成や文章作成を自動化するだけでなく、採用計画の立案や応募者の評価といった、より戦略的な意思決定の場面でもAIが活用されています。
まだ今のところ導入割合としては低いものの、キリンホールディングスは新卒採用に「AI面接官」を導入すると発表。横浜銀行も試験導入を決めています。AI面接官も今後一般的になっていくかもしれません。
コーディング試験で「生成AI」使ってOK 変わる採用トレンド
一部の活用例を取り上げながら、生成AIが採用活動にどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。
スカウト活動に生成AI導入 業務の効率化とマッチング率向上へ
近年、企業は「攻めの採用」を強化する傾向にあり、従来の求人掲載に加えて、積極的に候補者にアプローチする方法を模索しています。今年度「新たに採用チャネルを増やした」と回答した企業は35.7%に達しており、その中でも「スカウト型の求人媒体」(47.6%)の増加が顕著です。
このような流れを受け、スカウト活動に生成AIを活用する企業も増えてきました。
例えば、ある企業では生成AIをスカウト文面の作成や添削に活用し、スカウト業務の工数を大幅に削減。また、生成AIが候補者の職務経歴やスキルを分析し、より適切な人材にスカウトを送ることで、返信率の向上につなげた事例もあります。
AIの導入により、業務効率化はもちろん、マッチング精度の向上にもつながっているといえるでしょう。
コーディングテストにおける生成AI活用
IT企業を中心に、エンジニア採用の選考におけるコーディングテストで生成AIの利用を許可する動きも広がりつつあります。
従来、エンジニア採用においてコーディングテストは重要な評価基準の一つでした。しかし、「今後は生成AIによる自動プログラミングを前提とし、人間がその結果を適切に修正・活用するスキルが求められる」という考えのもと、企業によってはAIの使用を許可するケースが増えています。
実際に、生成AIの出現前と比べて「エンジニアに求めるスキルが変化した」と回答した採用担当者は4割を超えました。従来ほど重視されなくなったスキルとして「プログラミングスキル」(26.0%)が挙げられる一方で、コミュニケーションスキルやプロンプトエンジニアリングの重要性が高まりつつあります。
エンジニアに求められるスキルが見直され始めている中、生成AIの活用を前提にした選考方法が今後スタンダードになっていくかもしれません。技術の進化に伴い、エンジニアに求められるスキルも変わり続ける中で、採用プロセスや評価基準も柔軟に適応していくことが求められるでしょう。
まとめ
生成AIは、採用活動におけるあらゆる業務を効率化し、企業と求職者双方にとって新たな可能性となり得るツールです。単純作業の自動化にとどまらず、応募者の適性分析や選考プロセスの最適化、内定後の定着率予測など、データに基づいた精度の高い意思決定を支援する役割も期待されています。
IT人材不足が深刻化する現代において、生成AIを効果的に活用し、限られたリソースを最大限に生かすことは、採用を成功に導く重要な要素の一つとなるでしょう。今後も技術革新が進む中、生成AIが採用活動のあり方を大きく変える可能性は広がり続けていきます。
生成AIを取り入れた採用戦略は、IT人材不足という課題を克服し、企業の成長を支える有効な手段となるでしょう。
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