約170店の大量閉店! ドミノ・ピザは2位に転落するか? 1位を狙うピザハットとの違い:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
宅配ピザの勢力図が変わりそうだ。コロナ禍に大きく店舗網を拡大したドミノ・ピザが閉店ラッシュとなり、2位のピザハットは安定成長を続けている。両者の差はどこにあるのか。
ドミノ・ピザ対ピザハット、業界1位のゆくえはどうなる
ドミノ・ピザほど目立たず、着実に店舗を伸ばしてきているのがピザハットだ。運営会社はもともと日本KFCホールディングスの傘下にあったが、2017年6月に投資ファンドのエンデバー・ユナイテッドが買収。約5年で400店舗弱から500店規模まで店舗数を伸ばし、2022年3月期の売上高は約209億円、約13億円の経常利益が出ていた。
その後は食品商社のヤマエグループホールディングスが2022年8月に買収している。まだ続いていたコロナ禍を追い風に、2023年8月に47都道府県への出店を達成し、2024年4月に600店に達した。コロナ禍で100店舗以上を増やしたが、ドミノ・ピザと比較して無理のない拡大といえるだろう。500店台で停滞しているピザーラを抜き、店舗数では業界2位に浮上している。
ピザハットも当然、国内店舗数1位を目指し1000店を目標に掲げる。ヤマエグループホールディングスの中核企業が福岡市に拠点を持つこともあり、九州で100店舗の出店も目標となっている。ドミノ・ピザが大量に閉店していくのであれば、立地を選んで居抜きで入る展開もありそうだ。ヤマエグループホールディングスは7000億を超える年商があり、体力もたっぷりある。このままの勢いならば、3〜5年以内に宅配ピザの店舗数1位は、ドミノ・ピザからピザハットに交代する可能性が濃厚だ。
商品的に見れば、ドミノ・ピザとピザハットは、おひとり様向けの個食対応の商品に力を入れつつあって、ピザーラなどに先行している。ドミノ・ピザには「ピザBENTO」、ピザハットには「マイボックス」という、小サイズのピザにフライドポテトなどを付けて販売する、個食向けの商品がある。
一方、ピザハットにはドミノ・ピザのようなライスボウルのメニューはないが、おにぎりをヒントに開発された「ハンディメルツ」という、というワンハンドでサクッと食べられるメニューがある。また、「天下一品」とコラボしたり、二郎系の背徳感の高いピザを開発したりと、奇想天外な商品があるのもポイントだ。1月18日に発売したチーズとろとろの「飲めるピザ」シリーズも、3月9日までの限定販売ながら、早々と売り切れた店が多い。ピザハットが好調な要因として、欧米の発想の延長線上にあった、これまでのピザの商品開発に対して、一石を投じていることが挙げられる。
ドミノ・ピザが退却戦の泥沼から脱するには、ピザハットのようにこれまでのイメージを一新し、同業他社を圧倒する新商品開発または店舗開発が必要だろう。
ドミノ・ピザは1月15日、東京・有明の「住友不動産ショッピングシティ有明ガーデン」内の新しいフードコート「アリアケ フード ステージ」に、初のデリバリーを行わない、イートインとテークアウトの店をオープンした。フードコートでの“普通のファストフード店”出店がドミノ・ピザにとって打開策になるのか。今後の巻き返しに期待したい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“閉店ドミノ”の「ドミノ・ピザ」が、さらに「苦戦」しそうなワケ
2023年に国内1000店舗を達成していた「ドミノ・ピザ」の閉店ドミノが話題になっている。好調から一転、なぜこのような事態になっているかというと……。
セブン「宅配ピザ」参入の衝撃 テスト販売から一気に拡大も納得の理由
コンビニ最大手のセブンが宅配ピザに参入した。7月のテスト販売から一気に店舗を拡大するなど、大きく注力している。ではなぜ、セブンは今になってピザに注目するのか。





