韓国IR「インスパイア」が1周年 社長が考えるLTV向上策は?(2/2 ページ)
韓国のインスパイアが、3月にグランドオープン1周年を迎える。目を見張るのが改善するスピードだ。「走りながら改善する」ことによって顧客生産価値(LTV)を向上させている。なぜこういったことが可能なのか。インスパイアのチェン・スー社長にインタビューした。
印象的な色使い インスパイアの理念から
インスパイアでは、施設にいろいろな色を取り入れている。スー社長は「分かりやすいところでは、フォレストタワーは、ファミリーフレンドリーなホテルタワーですが、多彩な色を意図的に取り入れています」と話す。
その辺りの作り方が、北東アジアのこれまでのIR施設とは異なる印象を受ける。例えばインスパイアにはオーロラ、デジタルシャンデリアの下に位置する魅力的なオープンキッチンスタイルのシェフズキッチン、そしてインスパイア・アリーナなど、米ラスベガスなどの大きなIR市場を彷彿(ほうふつ)とさせる要素が多数ある。
インスパイアのリーダーとして、どのような組織を作っていきたいかを聞くと「成功するには異文化の人々の架け橋となることです。卓越した顧客体験を提供するために重要なこと」と答えた。
「人事や文化部門は、これらの価値観を新入社員に浸透させるために時間と労力を費やしています。私は社員に対して顧客にサービスを提供する専門家としてだけではなく、大きな組織の一員として、また個々のチームメンバーとして、インスパイアの理念を持ち続けるよう鼓舞するリーダーでありたいです」
インスパイアが直接雇用する従業員のうち、全体の80%は仁川市民であり、韓国の雇用創出に貢献している。韓国政府からは「2024年雇用創出大統領賞」を受賞。「2024年模範企業」にも選ばれた。
「われわれのプロジェクト投資の根幹にあるのが社会貢献で、『共存共栄』が大きな理念でした。現在インスパイアは、20ほどの高等教育機関と連携し、1000人以上の新卒を雇用しました。これが大きかったと思います。この採用方針により、インスパイアは韓国の一般的な企業よりも若い社員が多く、若手主導の企業文化が醸成されていると感じています」
アリーナでのコンサートが開かれた場合、インスパイアの客室が満室になると、当然に周辺のホテルに顧客が流れる。他のホテルも満室になり、周辺のスーパーの売り上げも向上するなど、地域経済にも貢献しているという。
企業論理を優先せず、客と向き合う
顧客第一とは、よく叫ばれている。だが実際に実践している企業は、どのくらいあるだろうか。現実的には企業論理が優先され、顧客第一が形骸化しているケースも少なくない。
スー社長率いるインスパイアは、スプラッシュ・ベイの改修や今回のインタビュー発言にもにじみ出るように、客と向き合うことによってサービスを充実させ、満足度の高いリゾート体験を提供している。その結果として、LTVの向上を図ろうとしているように感じた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Stray KidsにTXT 韓国インスパイア・アリーナが「K-POPの聖地」に
韓国の仁川国際空港西側に位置する統合型リゾートのインスパイア・エンターテインメント・リゾートは、同施設に併設したインスパイア・アリーナで3月までに開催するK-POPアーティストの公演ラインアップを発表した。
データ活用、接客 韓国のIR「インスパイア」に見る“LTV向上の要点”とは
投資額2200億円、敷地面積430万平方メートルと広大な韓国の統合型リゾート「インスパイア」。客に何度も訪れたいと思わせる施設をいかにして作り出し、顧客生涯価値(LTV)を高めているのか。インスパイア・エンターテインメント・リゾートのCMOに聞いた。
投資額2200億円 韓国にオープンした米・統合型リゾートが日本を“狙い撃ち”したワケ
韓国でIR「インスパイア(INSPIRE)」が、仁川国際空港西側にソフトオープンした。ホテル、カジノ、ショッピングモール、ウォーターパークなど多彩な施設を備えている。特にインスパイアが注力しているのが日本市場だ。
BTS擁するHYBE発 1億DL超“推し活”アプリ「Weverse」がエンタメの常識を覆すワケ
SEVENTEENの「THE CITY」 HYBE JAPANトップに聞く新時代のプロモーション
BTSやLE SSERAFIMなどのスターを輩出し続けるエンターテインメントライフスタイルプラットフォーム企業HYBE。同社がグローバルに展開しているユニークな公演ビジネスモデルが「THE CITY」だ。同社の日本本社HYBE JAPANのハン・ヒョンロックCEOに戦略を聞いた。
BTS、SEVENTEENを擁するHYBE ゲーム事業に参入するワケと勝算
数々のグローバルアーティストを輩出してきたHYBEが、なぜゲーム事業に本腰を入れるのか。同社のゲーム事業を手掛けるHYBE IMのチョン・ウヨン代表取締役を直撃した。
6471室を一斉開業する欧州最大ホテルチェーン 「投資は回収できる」と自信のワケ
日本に商機を見いだした欧州最大のホテル運営、仏アコーは2024年4月1日、日本初上陸となる「グランドメルキュール」12軒と、東京・銀座などで展開している「メルキュール」11軒の計23軒、6471室を一斉開業させる。CEOへのインタビューから日本を“狙い撃ち”した理由や、市場攻略のカギに迫った。

