四半期決算制度のデメリットも浮き彫りに
楽天が掲げる「楽天経済圏」戦略とは、EC・FinTech・モバイルの各サービスを中心に、多様な事業領域を“楽天ポイント”で横断的に結び付けるエコシステムを指す。
決算説明資料によれば、モバイルやカードの利用者を楽天市場やトラベルに送客し、そこで得たポイントをさらに金融サービスで活用するといったクロスユースが顕著に増えている。ユーザー単価の向上と解約率低下が同時に進むことで、多角的に利益成長をもたらす好循環がグループ内で生まれつつあり、モバイル事業とのシナジーが表れつつある。
一方で、株式市場の近視眼的な姿勢も浮き彫りとなった。楽天はモバイル事業での設備投資がかさんだ時期に、株価の下落や市場からの厳しい批判にさらされた。楽天の場合、モバイル投資の巨額赤字が連続して計上されたことで、経営の先行きが危ぶまれる一因となった。
しかし、四半期単位で赤字幅に焦点を当てるだけでは、こうした中長期戦略の妙味を十分に評価しきれない側面もある。今回の営業黒字化は、短期的な市場の「叩き」に対し、結果で示す形となった。
このように、ある企業が長期成長を目指す上で、四半期決算は情報開示としては有用な一方、過度な短期志向を助長する側面もあるとの指摘も根強い。四半期、つまりわずか3カ月で何らかの成果が出なければたたかれるという状況の時、私たちが経営者であったら、そのニーズに応えるためにも目先の成果に固執し、長期的な成長を描くことができなくなるのではないだろうか?
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