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怒っている人は「困っている人」 深刻なカスハラに、企業と個人が取れる対策方法は?人一倍「不安を感じやすい」日本人(2/3 ページ)

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カスハラを見分ける3つのポイント

 そもそも、カスハラとは何なのか。島田氏は、厚生労働省が2022年2月に公開したマニュアルを基に説明する。カスハラを判断する3つのポイントは以下の通りだ。

 「まず、お客さんの要求の内容が妥当かどうか。次に、胸をつかんだり土下座を強要したりする態度や手段が社会通念上どうなのか。そして、その対応をする従業員の就業環境が著しく害されるのかどうか。この3点がカスハラを判断する基準です」

 近年は、行政レベルでの対応も急激に進んでいる。東京都北海道では、2025年4月からカスハラ対策の条例化が決定している。他にも桑名市では実名公表制度を設けるなど、具体的な動きが加速している。

 「条例化は二段構えになっています。組織による従業員保護が第一段階で、それでも解決しない場合に行政がサポートする仕組みです」

 カスハラの範囲を明確にするため、島田氏はドイツのストレス科学研究者と協力し、カスハラのストレスを測る測定尺度の日本語版を開発した。これにより、カスハラの可視化と客観的な測定が可能になった。

 「これまでもカスハラを図る指標はありましたが、人によってカスハラだと思う基準は異なります。例えば、巧みにカスハラをさばける熟練者は、自分が受けているものをそもそもカスハラと認識していないことがあります。一方で、経験が浅い新人の場合、少しの指摘で『カスハラを受けた』と落ち込んでしまうことも。しかし、この尺度を使うことで、客観的な判断ができるようになりました。それに伴い、業種や職種、年齢、性別などさまざまな切り口から、顧客対応の困難さを可視化できるようにもなりました」

 調査結果からは、日常的にカスハラを受けている群は、精神的ストレスが著しく高いことも判明した。カスハラをほとんど受けていない群のストレス値が4.2点なのに対し、カスハラ高群では9点を超えた。「9点という値は、精神科に通う気分不安定障害やうつ病の方々と同レベルです」

対策は2軸で推進すべし ガイドライン作成で意識するべきこと

 では、カスハラ対策とは具体的にはどのように進めていけばいいのか。島田氏は、企業が主導して対策を進める「組織資源」と、従業員が自ら対策できる「個人資源」の2軸で考えるべきだと指摘する。

 まず、組織資源を増やすにはどうしたらいいのか。2025年4月以降、カスハラ対策が義務化されることを踏まえ、以下の具体的施策を提案した。

 「組織資源を増やすには、未然防止と事後対応の両方を含むガイドライン・マニュアルの整備が効果的です。整備の際には、カスハラの線引きを明確にし、対応フローを確立することが重要ですね」

 特に大切なのは、要求内容の範囲と許容できる態度の線引きだ。島田氏は、この線引きは業種や組織によって異なるとしながらも、3者間の共通認識が不可欠だと指摘する。

 「大前提として、この線引きは各組織で決めて良いのです。そのときに大切なのは、3者間で共通認識を持つこと。ここで言う3者とは、従業員、組織、そしてお客さまのことです。どこまでが妥当な要求で、どこからが許容できない態度となるのか。3者間でそこがしっかり握れていれば、かなり対応がしやすくなりますよ」


(写真はイメージ、iStockより)

 組織資源におけるカスハラへの対応には、「2つの軸」があると説明する。

 1つが先述した「3者間のルール」。もう1つは、「顧客への寄り添い」だ。現実問題、ルールだけを伝えるだけでは、納得しない顧客も存在する。そんなときに必要になってくるのが、寄り添いの姿勢だ。具体的に、どう寄り添うかまでマニュアルに盛り込めるとよい。

 こうした対応方針を、顧客対応時に使用する約款や説明書などの媒体で明示することで、具体的な対応ができるようになるだけでなく、カスハラの発生そのものを防ぐ効果もあるという。

 「例えば病院では入院時の書面で、学校では入学説明会での校長先生の説明で、基本方針を示すんです。これにより、お互いの認識のズレを防ぎ、カスハラの発生を減らせます」

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