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感情データでオペレーターの「SOS」をキャッチ 「スカパー!」コンタクトセンターの改革評価業務「400時間→120時間」に削減(2/2 ページ)

デジタル化の進展でコンタクトセンターには難しい問い合わせが集中する中、スカパー・カスタマーリレーションズは感情解析技術を活用し、オペレーターの心理状態と顧客満足度を可視化する「感情カルテ」を開発。人材の心を守りながら応対品質向上を両立するモデルケースとなるか。

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SVの評価業務、400時間→120時間まで削減 顧客起点で評価できるように

 「感情カルテ」の開発には試行錯誤があったと宮川氏は振り返る。人の感情はとても複雑で、例えば「感謝」を伝えている顧客でも、感情データでは「恐怖」や「後悔」の値が高く出るケースもあるそうだ。

 当初はリアルタイムでオペレーターに感情データを表示する方法も検討されたが、「お客さまが今『怒り』を感じています」などの情報を応対中に示すことは、オペレーターの心理的負担を増す。このため、蓄積された感情データから、SVの業務支援に役立つ情報を抽出するアプローチへと方向転換した。

 システム導入にあたっては、オペレーターの理解と同意も重要だった。「オペレーターのココロを守り、成長をサポートする」という明確な目的を伝えることで、約9割のオペレーターが自分の感情データの活用に同意したという。そして、スカパー!のコンタクトセンターでは2020年頃から感情解析データの活用を始めた。


およそ9割のオペレーターが同意(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)

 その効果は数字にも表れている。同社では「応対中・応対中以外ともに、サポートが必要な時、SVはすぐに気付き対応してくれる」と答えたオペレーターの割合は上昇。応対中以外の場合は37%から70%、応対中の場合は44%から87%まで向上した。オペレーターの見えないSOSに、SVが気付ける機会が増えたことが見て取れる。


(応対中以外)サポートが必要なときにSVが気づいて対応できるように(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)

(応対中)同上(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)

 また、感情解析を活用した応対評価システムの導入により、従来は月間約400時間を要していた評価業務が約120時間に削減された。中島氏は「この時間削減によって、SVがオペレーターと直接向き合う時間が増え、より質の高い人材育成やモニタリングに注力できるようになりました」と効果を強調する。


オペレーターのケアだけでなく、工数削減の効果も(提供:スカパー・カスタマーリレーションズ)

 「コンタクトセンターの品質と効率を両立させるには、従来のデータだけでなく、感情という新たな視点が不可欠です」と宮川氏。「感情カルテ」は2024年12月から外部提供を始めている。

【お詫びと訂正:本文初出で、「感情カルテ」の外部提供開始時期を「2023年12月」としておりましたが、正しくは「2024年12月」でした。訂正してお詫び申し上げます。】

「ヒト」を重視するコンタクトセンター運営

 「感情カルテ」を活用したオペレーター支援に加え、同社ではさまざまな角度から「ヒト」による対応価値の向上に取り組んでいる。例えばカスタマーハラスメント対策だ。

 「カスタマーハラスメントへの対応では、オペレーターの判断を尊重しています」と宮川氏。精神的につらいと感じた場合、オペレーターは自己判断で保留にし、SVに転送依頼ができる。また「感情カルテ」とは別に、リアルタイムで顧客の「怒り」感情が高まった際に自動でSVに通知するシステムも導入。対応に困っているオペレーターに対して、SVが早期に介入できる仕組みを整えている。

 人材育成面では、簡易な契約変更から複雑なトラブル対応まで、段階的なスキルアップを促す体系的な研修制度を構築。研修は全て動画化し、個人の習熟度に合わせた学習環境も整えている。「SVのスキル向上も欠かせません。毎年研修を実施し、マインド面からフィードバックテクニックまでを網羅的に学ぶ機会を設けています」と宮川氏。オペレーター表彰制度や応対コンテストなど、モチベーション向上の取り組みも定期的に実施しているという。

 今後のコンタクトセンターについて「AIによる自動化が進んでも、人間にしかできない複雑な問い合わせや感情に寄り添う対応の価値は高まっていく」と強調する。

 コンタクトセンターは「感情労働」と位置付けられる職種だ。顧客の感情に寄り添いながら自分の感情をコントロールする難しい仕事だからこそ、オペレーターの心のケアは非常に重要となる。同社は感情カルテの活用でオペレーターを守りながら、結果として顧客対応の品質も向上させる──そんな好循環を目指している。

 感情カルテのような仕組みを活用し、オペレーターの心を守りながら対応品質の向上を実現する取り組みは、単なる効率化を超えた、人材を大切にするコンタクトセンター運営のモデルケースといえるのではないだろうか。

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