なぜ企業は“遊びのプロ”に依頼するのか? ファミリー客を呼び込む「あそび場」の秘密(3/6 ページ)
「遊び場」を導入する企業が増えている。商業施設や競馬場、ボートレース場などで導入が進んでいるが、その背景に何があるのか。全国で3万5000カ所以上の遊び場を手がけるボーネルンド社を取材した。
子どもの体力低下問題を解決する「36の動き」
ボーネルンドがあそび場を提供する背景には、子どもの体力低下への危機感がある。スポーツ庁が実施する『体力・運動能力調査』によると、日本の子どもの体力は1980年代をピークに低下し、2000年ごろまでその傾向が続いた。
その後、項目によって回復傾向が見られるものの、「投げる」などの基礎的運動能力は引き続き課題が残り、近年はコロナ禍の影響で再び体力低下が報告されている。
そこで、ボーネルンドは子どもの健全な成長を育むあそび場を作るため、「36の動き」に着目した。山梨大学の学長・中村和彦氏の研究によると、人が生涯で身につける動きは80数種類あり、そのうち基本動作となる36の動きを幼少期に習得することが重要とされている。
「走る、跳ぶ、投げるなどの基本動作は、意識せずとも遊びの中で自然に身につけられる」と池上氏は説明する。直営施設の「キドキド」では、遊ぶだけで36の動きのうち28種類が自然に獲得できるよう設計されている。
また、同社には「プレイリーダー」と呼ばれるスタッフが約200人在籍し、遊びを見守る役割を担う。安全を確保しながら、子どもの「やりたい」という気持ちを尊重し、適切な距離感でサポートしている。
年間で5万人近い子どもと接することで、観察力と対応力が培われ、年齢に応じた能力の違いだけでなく、心の状態や体調の変化まで敏感に察知できるようになるという。
「子どもたちが親ではなくプレイリーダーに『見て』と声をかけるのは、プレイリーダーが子どもと繋がるアンテナを持っているから」と池上氏は語る。
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