障害者雇用は他人事か? 法定雇用率よりも会社が気にすべきこと:働き方の見取り図(2/3 ページ)
法定雇用率を達成できている会社は46.0%と半数未満にとどまる。政府は障害者雇用促進の施策を進めているものの取り組みが不十分な職場の方が多い状況だ。障害者雇用は他人事でしかないのか?
障害者雇用と関わる当事者になり得るケース
人事に携わっているわけではない大半の社員は「自分には関係ない」と考えていたりします。しかしながら、誰にでも自分が障害者雇用と関わる当事者になり得るケースがあります。大きく5つ挙げたいと思います。
まず、自分が障害者の同僚になる可能性です。雇用される障害者が増えるほど、自分が所属する部署の一員などとして仕事で直接関わる機会も増えます。
耳が不自由だったり発達障害で電話が苦手な社員の場合は、メールやチャットといった文字によるコミュニケーションが中心になるなど特性に合わせた対応が必要になります。一緒に働くメンバーに障害がある場合も踏まえて組織で連携して成果を出していくために、あらかじめ配慮すべきことや、必要な知識、スキルを身につけておくことは大切です。
次に、障害がある人が取引先の担当者になることもあり得ます。取引上の立場は相手が顧客の場合もありますし、自分が顧客の場合もあります。それが2点目と3点目です。コンビニやスーパーなど、日常の買い物客として障害者の店員と接することもあるかもしれません。
4点目は自分自身が障害者になる可能性です。事故や病気などさまざまな事情で誰もが障害者になり得ます。自分ではなくとも、家族や友人など親しい人が障害者になることも考えられます。それが5点目です。
いまは他人事としか思えなかったとしても、誰しもが突然自分事になる可能性を有しています。「自分には関係ない」と決めつけるより、「他人事ではない」前提で障害者雇用に関する情報に接して知識やスキルを習得しておくことはプラスにこそなれ、マイナスになることはないはずです。
「画一性から多様性へ」シフトする社会
また、社会全体に広がりつつある大きな変化に目を向けると、障害者雇用をめぐる別の重要な側面も見えてきます。
これまでの職場では長い間、業務の配属や転勤など会社からの指示を絶対視して従順に動く人材が重宝されてきました。誰もが同じように標準の視点や能力を備えていることを求められた、画一性重視の職場環境だったと言えます。
しかし、人々の価値観は変わりつつあります。仕事に求める個々の価値観や志向性は異なり、画一性の押しつけに対する抵抗感は強くなりました。テクノロジーや市場環境の変化速度は著しいだけに誰もが同じような視点に囚われてしまうことのリスクは大きく、個々が持てる視点と能力を生かして柔軟に対応できる多様性重視の職場環境が求められるようになっています。
画一性重視の観点に立つと、標準との違いは正すべき対象としか見なされません。障害者個々の特性も標準とズレている点ばかり目を向けられたり、職場から標準通りの視点や能力を備えることが難しいと判断されれば排除されることも起きやすくなります。
しかし、多様性重視の観点に立つと誰もが違っているのが前提です。緻密な作業は苦手でも、人との会話が得意な人であれば接客業務や営業、その逆であれば入力業務や経理といった具合に、障害の有無にかかわらず人それぞれで異なる個性や特性を生かそうとします。
職場が多様性を重視し、個々の違いを生かして強みにするチームを構築していくのであれば、障害者の特性は正すべき対象ではなく、武器としてどうチームの成果に貢献してもらうかという観点から見直されることになります。
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