障害者雇用は他人事か? 法定雇用率よりも会社が気にすべきこと:働き方の見取り図(1/3 ページ)
法定雇用率を達成できている会社は46.0%と半数未満にとどまる。政府は障害者雇用促進の施策を進めているものの取り組みが不十分な職場の方が多い状況だ。障害者雇用は他人事でしかないのか?
障害に関係なく、誰もが希望や能力に応じて働ける社会を実現するため、会社には法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります。2024年4月には、その比率が2.3%から2.5%へと引き上げられました。
しかし、厚生労働省の令和6年障害者雇用状況によると、法定雇用率を達成できている会社は46.0%と半数未満にとどまります。政府は障害者雇用促進の施策を進めているものの取り組みが不十分な職場の方が多い状況です。
通常、賃金や採用など雇用課題に関する施策は多くの人が自分事だと感じやすいため関心が集まります。ところが、障害者雇用の施策は関心を集めづらい面があります。そのため、会社の取り組みとしての優先順位が高くないことが法定雇用率の達成状況などに表れているように感じます。でも本当に、障害者雇用は他人事でしかないのでしょうか。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫
愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。
所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。
NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
まだまだ不十分な障害者雇用
厚労省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、雇用されている障害者の数は110万7000人。平成30年調査の85万1000人よりも、25万6000人増えています。障害者雇用が促進されてきている様子がうかがえますが、総務省の労働力調査によると、令和5年の全雇用者数は6067万人です。この数字を分母に先ほどの110万7000人を当てはめて見ると、雇用されている障害者の比率は約1.8%になります。
一方、令和6年版障害者白書によると身体障害者・知的障害者・精神障害者を合わせた合計は1160万2000人。厚労省が障害福祉サービス等報酬改定検討チームで提出した資料では、人口の約9.2%に相当するとされています。全雇用者に占める障害者比率1.8%は、人口比率の5分の1に過ぎず、障害者雇用の促進は、まだ不十分であることがうかがえます。
政府はさらなる障害者雇用促進策として、2026年7月から法定雇用率をもう一段引き上げて2.7%にする予定です。常時雇用する社員数が100人超の会社は、法定雇用率に対して不足している障害者に応じて1人当たり月額5万円の障害者雇用納付金を納めなければなりません。
現時点でも未達成の会社が過半数なのに、法定雇用率がさらに上がれば障害者雇用納付金を払う会社がもっと増えることになりそうです。納付金の支払い負担なども踏まえ、人事担当者の中には障害者雇用を重要課題と認識している人が少なくないはずです。
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