「すき家」は、なぜ2カ月も“ネズミ混入”を伏せたのか? 対応の遅れが招いた大炎上:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
すき家の「みそ汁」にネズミが混入していたこと認めたゼンショーHDだが、発覚から発表まで2カ月間もあったことで「陰謀論」が再燃している。危機管理のプロから見ると、これは不思議なことではなく……。
発表が遅れたもう1つの可能性
「企業リスクをSNS上の数で判断するなんてことがあるのか」とにわかに信じられない人も多いと思うが、普通に「ある」。というより、今やそれが大手上場企業では普通だ。筆者が本格的に企業危機管理に携わるようになった15〜16年前までは、投稿や口コミの内容を見ながら「これはマズくない?」「どうやって対応する?」と社内で議論しながら、外部のコンサルなどのアドバイスを参考にしつつ対応を決めたものだ。
しかし、SNSの普及でSNSマーケティングが一般的となり、投稿の広がり方や反応などのデータが可視化できるようになると、SNSリスクの対応も「数」が目安になる。どんなリスキーな投稿内容であっても、「ほとんど見られていない」のであれば、「リスクの低い投稿」と判断されるようになった。今回の「ネズミ味噌汁」も、3月下旬まではそうだったのではないか。
そして、このようなSNSリスクの対応方針に加えて、もう1つ可能性があるのは「決算対策」である。
ご存じのように、ゼンショーHDは好調だ。2月12日に発表した2024年4〜12月期の連結決算によると、純利益が前年同期比56%増の341億円。同期間では2年連続で過去最高を更新した。
この勢いを支えているのが、主力の「すき家」であり、特に既存店が好調である。
しかし、もし1月21日に発生した「味噌汁にネズミ混入」を丸亀製麺のように翌日にプレスリリースで公表してしまったら、この勢いにブレーキがかかってしまう恐れがある。
企業価値の最大化をミッションとする経営陣としては、どうにかそれを回避して既存店の好調さを3月までキープしたい。そうすれば、2025年3月期下期決算も最高の形で終わることができるからだ。
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