定性的な項目を「定量的」に評価する方法は? 自治体の「プロポーザル型事業者選定」を考える(2/2 ページ)
「使いやすさ」という人によって評価が異なりそうな項目を定量的に評価するにはどうしたらいいのでしょうか? 今回も自治体のプロポーザル型事業者選定を効果的に実施するための調達仕様書、審査基準の構成について考えます。
優劣を点数にどう反映させればいいのか?
さて、定量的に比較できるようになったとして、その優劣を点数にどのように反映させるのか、というのが次の論点となります。他の団体の事例でよく見かけるのが、
MUSTで求める時間が60秒であるとして、それよりも短いものを高い評価としたいので、
- 1秒から10秒の場合は5点
- 11秒から30秒の場合は3点
- 31秒から60秒の場合は1点
- 61秒以上の場合は0点
をWANTとして加点する。
といったように、値の範囲により、相応の点数を付与するというものです。
ただ、この場合は設定した範囲自体が適切なのか、という疑問が残ります。また、値が範囲の境界にある場合に不公平が生じることも無視できません。そこで、私がよく使う方法として、各事業者の平均からの乖離(偏差)で点数を付与するというものがあります。
つまり各事業者の平均の値が常に配点の中間点になる、という考え方です。
計算式は次のとおりです。
例えば、3社の提案で20秒、30秒、50秒という値が出てきたとしましょう。3社の平均秒数は、(20+30+50)/3=33.33秒です。この項目の配点を5点として、上記の計算式に当てはめると、
- A社(20秒):33.33/20 * 5/2 = 4.15
- B社(30秒):33.33/30 * 5/2 = 2.78
- C社(50秒):33.33/50 * 5/2 = 1.67
という点数となります。
この方法は機械的に計算が可能で、値の範囲を気にする必要もありません。各社からの提案の値を予測しなくても審査基準を作成できるので、評価に対する発注者側の恣意性も排除できます。
なお、値が大きなものが優位となる場合の計算式は次のとおりです。
ここまで説明してきたので、すでにお気づきかと思いますが、この計算の考え方は、プロポーザルの価格点の評価にも応用できます。
私がよく見かける他団体の事例では、価格点の計算式を、予算額や予定価格からの乖離で行っているケースがほとんどです。
しかし、限られた1社からの見積もりで予算を組んだなど、予算の根拠となる参考見積もりの取得が適切に行われていない場合、そもそもの予算額や予定価格が適正なのかは疑ってかかるべきでしょう。現在の自治体の調達事務における予算額は水ぶくれしている可能性もあるのです。
そこで、予算額や予定価格によらず、純粋に各事業者間の見積額の比較により優劣を決めることができる、この計算式はもっと活用されてもよいと思います。
次回はプロポーザル評価における、面談審査(プレゼンテーション)の考え方、そしてこれらの評価に生成AIを活用する道筋について考えていきましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
プロポーザル型事業者選定、自治体職員が押さえておきたい「調達仕様書」の書き方
今回は「プロポーザル型事業者選定」のための調達仕様書の書き方を解説する。
DeepSeekの破壊的な推論能力 自治体にとって“転換点”だと言えるワケ
今回のテーマはローカルLLM。中国のAI企業DeepSeekが自社開発の大規模言語モデル「DeepSeek-V3」「DeepSeek-R1」を発表した。ローカルLLMとしてのDeepSeekの出現は、自治体にとっての一つの転換点となる可能性がある。
動画生成AI「Sora」でプロモーション動画を制作してみた 自治体での活用法は?
今回は、自治体のプロモーション動画制作などにも応用できそうなAIによる動画生成を活用した事例を紹介する。
ChatGPTを使って「文書機密レベル」を判別する方法 自治体の情報セキュリティについて考える
今回は「自治体における情報セキュリティの考え方」について見ていきたい。情報資産の「重要性レベル」をいかに判別していくべきなのか。
ChatGPTに重要な情報を送っても安全か? 自治体のネットワーク分離モデルから考える
自治体における生成AIの利活用、今回は「送信された情報の管理の問題」、つまり「ChatGPTに重要な情報を送信しても安全なのか?」という点について考えたい。

