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日立、顧客専用のAIエージェント発表 熟練者の「勘やコツ」を取り込めるか?

日立製作所は3月31日、「AIエージェント開発・運用・環境提供サービス」を販売開始する。

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 日立製作所は3月31日、「AIエージェント開発・運用・環境提供サービス」を販売開始する。熟練者のノウハウを取り込んだ顧客専用のAIエージェントを提供することで、建設、輸送、電力、ガス、鉄道などの分野における人手不足や知識継承の課題解決を目指す。サービスの提供開始は6月30日を予定している。


熟練者の「勘やコツ」を取り込めるか?(写真提供:ゲッティイメージズ)

労働力不足と知識継承の課題 AIエージェントで解決

 労働人口減少により、社会インフラを支える現場では深刻な人手不足が発生している。現場の業務では、経験に基づく勘やコツに頼る業務が多く、熟練者の減少に伴う知識継承の問題が顕在化しているという。

 万一の障害発生時には迅速な復旧が求められ、現場で働くフロントラインワーカーの業務負担の増大が課題となる中、デジタル技術を活用した業務変革が急務となっている。しかし、熟練者から暗黙知を引き出して形式知にひもづけることは難しく、現場業務へのAI活用が進みにくい状況が続いていた。


日立が「AIエージェント開発・運用・環境提供サービス」を販売開始

 こうした課題に対応するため、生成AIを活用した業務効率化やサービスの高度化など、経営改革を推進する顧客を伴走型で支援する「生成AI活用プロフェッショナルサービスpowered by Lumada」のメニューの一つとしてAIエージェント開発・運用・環境提供サービスを提供する。

 同サービスは、AIの専門家集団である日立のGenAI Professionalが、日立グループにおける数百の事例で獲得したOT(Operational Technology。工場や発電所などの物理的なシステムや設備を最適に動かすための制御・運用技術)ナレッジを生かし、顧客と伴走しながらAIエージェントを開発・提供することによって、フロントラインワーカーの業務効率向上を支援する。

 具体的な活用事例として、日立ビルシステムや日立パワーソリューションズではAIを、インフラ設備の施工やメンテナンス業務の問い合わせ対応、初動判断などに活用してきた。

 GenAI Professionalは、フィールドワークによって行動観察をし、記録を残すエスノグラフィーや、AIインタビューなどの手法を用いて熟練者の暗黙知を抽出。それらを帳票や設計文書などの形式知とひもづけてAIが学習データとして利用できるようにするなど、現場でのAI活用のノウハウを積み重ねてきた。


日立ビルシステムの活用事例

 今回、熟練者のOTナレッジを取り込んだ高精度な回答を生成できるAIエージェントの第1弾として「保守問い合わせAIエージェント」も開発した。日立グループの問い合わせ業務で実績のあるAIアプリ機能をベースにしていて、顧客固有のドキュメントや辞書を登録することによって、迅速かつ正確な回答を提供できる。

 同AIエージェントは、問い合わせ内容の自動解析、適切な担当者への振り分け、追加情報の自動収集といった機能を備えているという。そのため、保守や障害対応をする際の多岐にわたる問い合わせ業務を支援できる。


新サービスの価格と提供開始時期について

 AIエージェントの開発・実行環境については、最新の自然言語処理(NLP)技術を駆使して、言語データの関係性を可視化し、分析するためのツールであるLangGraphや、誰でもAIアプリケーションを開発できるオープンソースプラットフォームであるDifyなど先進的なオープン技術を活用。自律的な動作を支援する。また、顧客の業務内容や適用範囲に応じて、パブリッククラウド上での小規模導入や検証、プライベートクラウドで機密性が求められるデータを利用するための環境を構築するという。

 これらの環境は日立がマネージドサービスとして維持・保守をするため、顧客は安心してAIエージェントを利用できるようにしている。今後は、AIによる情報の信頼性の判断や、不適切な回答を制限するAIガードレール保護の研究開発も進め、より高度な安全基準が求められる業務へのAI適用を目指す。

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