物価高の救世主「プライベートブランド」が、地方スーパーの再編を加速させる深いワケ:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
コメや青果など、多くの食品の価格が上がる中、比較的安価で良質なものを提供できるプライベートブランドに注目が集まっている。プライベートブランドは物価高時代のスーパーの救世主となるのか。そしてスーパーをどのように変えるのか……。
PBはどう展開されてきたのか
PBは小売ブランドの商品であり、基本は小売が自社専用の商品を、問屋などの中間流通を介さずにメーカーと直接契約して作ってもらうため、全量買い取りで在庫リスクを小売が負う形になっている。在庫リスクがないことはメーカーが価格を安くできる大きな要素だ。
また、中間マージンや広告宣伝費がほとんどないため、その分売価を安くできる。小売がリスクを引き受ける分、一般商品に比べて高い利幅を確保しつつも、売価を安くできるため、PBの比率が高ければ高いほど、収益率が改善するのである。
ならば、これまでも小売はPB開発に全力投入して、全てPBにすればよかったはずなのだが、なかなかそうはいかなかった。消費者がPBの安さは理解しても、その価値や品質をなかなか信用してくれなかったからである。
首都圏屈指のディスカウントスーパーであるオーケーは、こうした消費者の感覚を知り尽くしていたため、PBをほとんど扱わず、ナショナルブランド(以下、NB)のディスカウント販売で消費者の高い評価を得てきた。商品を絞り込み、商品ごとの扱い量を増やすことで低価格の仕入れを実現。消費者の支持を得て高い成長力を維持することで、将来的な仕入れ量の拡大を約束し、さらに仕入れ値を安くするという手法で地域最安値を実現してきた。
しかし、こうしたモデルは長年かけて構築してきた消費者との信頼関係が前提であり、一朝一夕に模倣できるものではない。小売にとって、低価格と収益性を両立できるPBの強化は重要だ。しかし、消費者のNBへの圧倒的な信頼が大きな壁となり、PBの浸透は進んでいるとはいえなかった。
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