物価高の救世主「プライベートブランド」が、地方スーパーの再編を加速させる深いワケ:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
コメや青果など、多くの食品の価格が上がる中、比較的安価で良質なものを提供できるプライベートブランドに注目が集まっている。プライベートブランドは物価高時代のスーパーの救世主となるのか。そしてスーパーをどのように変えるのか……。
中小スーパーは、どう生き残るべき?
食品スーパー業界においては、これまでも、中堅中小スーパーが共同でPB商品を開発するといった共同仕入機構を組成して、大手に対抗するという動きはあった。例えば、CGCは加盟企業200社以上が参加する共同仕入機構で、その加盟社売上規模は合計5兆円に達するという。これはイオンよりは小さく、ドンキよりは大きいイメージだ。CGCはPB売上額を公表していないが、イオンに次ぐ規模があるといわれている。
こうした共同仕入機構への加盟は、PBを手に入れられるというメリットだけでなく、加盟企業同士の連帯も生み出す。実際、CGCでは加盟企業同士の経営統合に進んだ事例がいくつもある。
代表的なのが、北海道のCGC加盟企業を軸に統合し、後に東北の加盟企業も参加して、売上5915億円にまで大きくなったアークスである。新潟・北関東の加盟企業が経営統合し、売上2702億円規模になったアクシアルリテイリングも、業界では有名なCGC軸の再編事例である。PBの必要性が、スーパー業界再編の重要な発火点となっているのである。
スーパー業界は今、人件費やエネルギーコスト高騰、価格転嫁の遅れといった「三重苦」の状況で、大手でさえ減益となっている。中堅・中小規模の地場スーパーの営業利益率は1〜2%を下回る企業が多く、三重苦によって赤字に転じる企業も増えている。特に、地方における人手不足は深刻であり、これまで非正規スタッフの労働集約的作業に頼ってきた中小スーパーは十分な賃上げもできず、近隣の大手スーパーの賃上げに戦々恐々としているという。
中小スーパーが店と雇用を守っていくためには、合従連衡によって一定の規模になることが、重要な選択肢となりつつある。デフレ時代に適していた労働集約的なビジネスモデルは終わりつつある。この変化を認識すべきだ。地域ごとの地場企業が割拠してきたこの業界も、さらに大きく動くときが来ているようだ。
著者プロフィール
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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