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日本のインバウンド施策の“危うさ” 「欧米豪・富裕層」戦略、本当に正しいか(3/4 ページ)

日本の観光産業は、まさに問題山積の状況だ。立教大学経営学部客員教授や、多くの地域の有識者・アドバイザーなどを務める永谷亜矢子さんに話を聞いた。

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富裕層向け戦略、正しいか?

――今回の著書でもう1つ興味深かったのが、「富裕層向けの事業が実態に即してないのではないか」という問題提起です。

 そもそも現地に安いツアーや観光コンテンツが足りていないのに、マーケティングがゼロの状態から、いきなり振り切って高額なコンテンツを作ろうとするといった傾向に危うさを感じます。

 富裕層のニーズを肌感覚で理解するには、その人たちと同じ、あるいは近しい体験を経験しておくべきだと思うのですが、現実はそのような経験や視点を持っていない人たちがよく分からないまま手をつけ、「富裕層向け」とされる高額な商品を作っています。

 また、宿・ホテルに着目すると、1泊2人1部屋で7万〜15万円前後のミドルクラスの部屋にまだまだ空きがあるのに、一足飛びに20万円以上の高級ホテルだけを売ろうとするのはどうなのでしょうか。

 最高クラスの部屋なんてそんなに数があるわけじゃないし、サービスに対応できる人材も少ない。さらに言えば地元資本じゃないケースが多い。それよりも先にミドルクラスの部屋の空き室率を下げる努力をして、地域全体にお金が落ちるようにしたほうがいいのです。

 「富裕層観光」を掲げて超高級ホテルだけの誘致・集客をしても、地域側の分裂の原因となるし、日本全体では高単価インバウンド層はまだまだこれからなので、全体最適という視点で考えるのも重要です。

 なお、高付加価値とは価値の高い体験であり、高額なサービスではありません。

 もし、実行するにしても勝ち筋を見極めたうえで、ツアーにせよホテルにせよ「まずは倍額から」「ミドルクラスから狙っていこう」「継続できる方法でやりましょう」といった具合に、地域にフィットしたやり方で進めていくべきです。

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