日本のインバウンド施策の“危うさ” 「欧米豪・富裕層」戦略、本当に正しいか(4/4 ページ)
日本の観光産業は、まさに問題山積の状況だ。立教大学経営学部客員教授や、多くの地域の有識者・アドバイザーなどを務める永谷亜矢子さんに話を聞いた。
観光の担い手不足、どう解消する?
――最後にうかがいたいのは、現在、観光業界で大きな課題となっている「担い手不足」についてです。これを解消する手だてはありますか。
観光事業を持続的なものにするには、地元に対する「愛」と地域の観光を持続させる「必然性」を持つ人たち、つまり地元の人たちが担うべきです。
そして、少し発想を転換して、「異業種参入」を図るべきではないかと思います。例えば、地域で農業や漁業に携わっている一次産業の人たちを思い浮かべてみてください。
現在、自転車を使って観光地を巡る旅「サイクルツーリズム」が人気ですが、コースの途中にお店が全然ないために、コンビニで弁当を買って途中で食べるというケースが多かったりします。
しかし、途中にお店はなくても農家はあるわけです。その庭先にテーブルと椅子があって、収穫したての野菜を気持ちのいい場所で食べられたらどうでしょうか。
漁業体験にしたって、ただ船に乗って漁を見学するだけでなく、捕れたての魚を港で一緒にさばいて刺身や丼ものにして食べることができれば体験の付加価値がぐっと上がりますし、その分、単価を上げることができます。
お客さんはもちろん喜ぶし、漁師さんだって目の前でおいしそうに食べるお客さんを前にしたら「自分の仕事が人を幸せにしている」という手応えを感じ、やる気が出るでしょう。近年、推進が叫ばれている「一次産業の六次産業化」であり、まさにWin-Winの関係ということができます。
このように、わざわざ外から人を連れてきたり、新たに育成せずとも、すでに地域にいる人たちのマンパワーを活用することで、持続可能な観光が実現できるはずです。
営業、編集、PR、プロモーション、社長業に大学教授。リクルートで、東京ガールズコレクションで、よしもと他で鍛え上げた“たたき上げのマーケ脳”を持つ著者が初めて書き下ろした観光業界のリアルを描いた衝撃作。
机上の空論で終わらない、実践的な思考法とノウハウが詰まった本書は、観光従事者はもちろん、マーケティングを必要とするすべての人にとって大きな武器となるはず。
日本の観光業が、その担い手たちがきちんと稼げる観光経済圏を作るには、何を知り、何をなすべきなのか。この1冊を読み終わったとき、その答えがきっと脳内に宿るはずです。
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