すき家の「大炎上」「全店休業」なぜ起こった? ネズミや害虫の「混入」ではない根本原因(3/3 ページ)
ネズミや害虫の混入が話題になったすき家。公表の遅れが批判の的になる中、全店の臨時休業に踏み切ったものの短い日数で対策を進められるかは微妙なところだろう。あらためてここまでの流れを整理していく。
炎上を抑え込んだ好事例とは?
これらの初動対応において、対照的な動きを示したのが丸亀製麺だ。2023年にSNSで「丸亀シェイクうどん」にカエルが混入した動画が投稿されると、その翌日に同社はプレスリリースにて野菜加工工場で混入した旨と、生野菜を使用した一部商品の販売休止を発表した。ネズミとの忌避感の違いも影響しているだろうが、今回のすき家騒動ほど話題にはならなかった。
これらの事例を踏まえると、混入防止に努めるのはもちろん、発生後の対応も重要といえる。冒頭でも触れたが、消費者がSNSという強力な“武器”を持っている現在、企業が不祥事を隠ぺいすることは不可能である。食品産業に対する消費者の目は特にシビアであり、対応を誤ればそれ自体も火に油を注ぐきっかけになり得る。
混入に関するクレームがあれば、投稿の前に自ら公表する重要性は日に日に高まっている。仮にクレームがないまま画像がSNSで拡散した場合も、速やかに公表しなければならない。原因が断定できない場合でも、考えられる混入の経緯や対応策を示せば炎上は抑えられるはずだ。
今回、すき家は全店の臨時休業に踏み切ったものの、たった5日間で対策を進められるかは疑問だ。筆者は、ある種の「禊」を消費者にアピールするため、取りあえず休業を決めたと考えている。不祥事後の対応が後手になるほど禊の期間は長くなり、損失が膨らむことをあらためて企業は認識する必要がある。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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