PB強化、AI活用で独自色 トライアル傘下入りで西友はどう変わる?:後編(1/3 ページ)
市場に驚きをもって受け止められた、トライアルによる総合スーパー大手西友の買収。後編では、PBの開発やAI活用で独自性を確立していく両社の歩みを振り返りつつ、トライアル傘下入りで西友がどう変わっていくのかを占う。
九州を本拠とするディスカウントストア「トライアル」による、総合スーパー大手「西友」の買収は、流通業界をにぎわすビッグニュースとなった。
前編「西友買収、なぜトライアルだったのか? 有力候補イオン・ドンキではなかったワケ」では、西友とかねて縁が深かった流通大手「イオン」や「ドン・キホーテ」ではなく、トライアルが急浮上した要因について解説。ウォルマート日本法人だった西友と、日本版ウォルマートを目指したトライアルの方向性が一致した経緯をたどった。
後編では、PB(プライベートブランド)の開発やAI活用で独自性を確立していく両社の歩みを振り返りつつ、トライアル傘下入りで西友がどう変わっていくのかを占う。
脱・低価格へ 迫られたブランドイメージ再構築
トライアルと西友は特売チラシ文化が根付いた日本で「EDLP」(毎日低価格)の普及に大きな役割を果たしたが、両社とも売り場に共通の課題を抱えていた。
西友は2004年4月にスーパーセンター1号店「西友沼津店」を開店するなど、ワンフロア集中レジ方式でフルラインの衣食住や余暇商品を展開する、ウォルマート主力業態の本格展開を目指した。
しかし、日本の大都市圏では生活様式や土地確保との兼ね合いで普及せず、旧西武セゾン時代から営業する駅前型・中心市街地型高層店舗のウォルマート化や食品スーパー業態での新規出店が主となった。
トライアルも業容拡大の礎となった居抜き店舗の多くが、本来のスーパーセンターの定義から逸脱した仕様であり、経年由来の空調設備故障やクレンリネス(清潔感)の低下、管理体制に致命的といえる課題を抱える店舗も少なくなく、店舗標準化の遅れはブランドイメージの毀損に結び付いた。
メガセンタートライアル日向店。2001年12月に経営破綻した九州地場流通大手「ラララグループ」の大型店「ASTY日向寿屋」を前身とするが、2020年8月の全面新装までタイル剥落やトイレ破損といった老朽化、来店客によるゴミ不法投棄対策の遅れが地域課題になっていた。
西友は旧西武セゾン時代、トライアルは居抜き以前からの顧客流出を引き起こしており、低価格至上主義ともいえる売り場づくりの軌道修正、ブランドイメージの再構築が急務となった。そこで両社が目指したのは、高付加価値PB開発とIT強化だ。
「無印良品」立ち上げた西友
西友は1980年12月にノーブランド商品「無印良品」を立ち上げ、西武セゾン内外を結ぶ橋渡し役を担うまで発展したが、1998年12月の無印良品運営会社「良品計画」東証2部上場や西友子会社「東京シティファイナンス」(TCF)を含む西武セゾン系各社業績悪化のあおりを受け、最終的に全株式売却と関係解消を余儀なくされた。
同社にとって無印良品に代わる次世代の看板PB育成は長年の課題であり、自社PB「西友ファインセレクト」の立ち上げやウォルマート系共通PB「グレートバリュー」拡販を試みたが、いずれもイオン系共通PB「トップバリュ」やセブン&アイHD系共通PB「セブンプレミアム」といった競合と比べ、スケールメリットを生かした価格訴求以外の強みに乏しく、存在感を示すことができなかった。
看板PB育成に難航したが、2012年12月に新たな自社PB「みなさまのお墨付き」の開発に成功。消費者テストを経た商品化手法自体は、西友と同じくウォルマート傘下の英アズダのPBをベースとしたものであるが、レトルトカレーを始めとする西友独自の多品目高付加価値のラインアップで根強い支持を得るに至った。
加えて、同社は2018年1月に楽天と戦略的提携を締結し、同年4月に店舗出荷型ネットスーパーを合弁化。10月には千葉県柏市に倉庫出荷型ネットスーパー専用物流センターを開設するなど同事業の強化を図った。
2021年3月には楽天が西友株式の20%を取得したことで、2022年4月までに「楽天西友アプリ」や楽天系キャッシュレス決済手段をフルラインで導入するなど、楽天経済圏と西友実店舗の相互送客や購買データ活用を目指す「OMO」(Online Merges with Offline)戦略の総仕上げを図った。
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